brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

ファンクショナルリーチテストの意義

 日々臨床を行っている皆さんお疲れ様です。今日はバランス検査の一つファンクショナルリーチテストについて少しお話しようと思います。内容は題名の通りファンクショナルリーチテストを行う意義についてです。

 

ファンクショナルリーチテストとは

 まずバランス機能検査としては非常に信頼性は高く、グレードAです。

実際の検査としては、①立位になる、②上肢を前方へ挙上(90°)、③そこから上肢を前方へ突出しどこまでいけるか距離を測る検査です。

 注意点としてステップを伴ったり、体幹の回旋を伴う代償を起こさないことです。また別法として上肢の挙上が難しい患者には肩峰の移動距離を測ることもあります。

 

ファンクショナルリーチテストで見られるバランス

・事前の運動予測

・運動中のバランス戦略

 

事前の運動予測

まず事前に運動予測する要素としては、フィードフォワード系やpAPAがあります。その2つついてはまた今度ということで・・・。

 簡単に言いますとフェードフォワード系やpAPAと呼ばれる動作をする前に筋活動を起こして姿勢変化に対して動作時の安定性を確保する体の反応になります。

 上肢の素早い挙上時に腹横筋の筋活動が100ms速く活動を開始するのは有名かと思います。

 

 この反応とファンクショナルリーチテストの関係についてですが・・・。

 

 まず検査に入る前に上肢の挙上直後を観察します。その際にふらつきが出現するのかしないのかをみるんですね。ふらつきが出現する場合は事前の筋活動を起こせていない可能性があります。原因の一つとしては事前の筋活動を作り出すのは、視覚情報に頼っているため視力に問題があるのかもしれません。もしくは認知面の問題、単純に上肢の円滑な挙上ができないだけ、それに伴う運動連鎖不全・・・など。可能性は広がるのでそれぞれの項目について消去していって残ったものを採用しましょう。

 

運動中のバランス戦略

 バランス戦略で代表される足関節戦略と股関節戦略があります。この二つはみられるものが違うのと移動できる距離が違います。

 足関節戦略の特徴としては、COPの移動を行うときに働く。股関節戦略と比べて重心の移動距離は短い。安定した床面で機能する、です。

 

 逆に股関節戦略は狭い場所や不安定な場所にいるときに働くことや移動距離が足関節戦略よりも長いこと。股関節戦略で支えられない場合にはステッピング反応が出現します。

 

移動距離は、足関節戦略<股関節戦略

 

 足関節戦略を行う意義としては、COPの移動を行うと話しました。歩行を考えてもらえばわかるのではないかと思います。最初の一歩を踏み出す際にまず遊脚側後方へCOPが移動します。その反応を受けて支持脚前方へCOGが移動します。その後COGの後をCOPが追いかけるように支持脚側に移動していきます。この反応を逆応答反応といいます。

 

 つまり重心移動を抗重力伸展活動下で行うにはCOPを最初に動かしCOGの位置を変える必要があるわけです。

 

 これができないと例えば前方へ転倒しそうになった時にCOPが前方へ移動して、COGを追い抜いて前方へ移動することで重心位置を後方へ戻して転倒を防ぐわけです。しかしそのCOPの動きを起こせないため、そのまま前のめりに転倒してしまいます。イメージとしてはパーキンソン患者の姿勢反射障害のようなものです。

 

 そして股関節戦略についてですが、この戦略は支持基底面内に重心を留めておく最後の砦となります。つまり支持基底面内でCOGを動かせる最大範囲を示しています。この範囲が狭くなると転倒につながるのは想像できると思います。指先の方へ重心移動または踵の方へ体重移動し、重心を支持基底面内に留めておけないとなると立位姿勢でいるだけでふらつき転倒します。

 

 この反応は両方ともできないといけないことが分かると思います。そのためファンクショナルリーチテストを行ってもらう場合は上肢の前方突出時の反応を見る必要があります。つまり最初は足関節の戦略で行うため殿部は後方へ移動しません。足関節で行える範囲の前回を超えると途中から殿部を後方に突出してリーチ動作していきます。この切り替えを行えているかみること。

 

 そして距離がどれくらいかをみることで、股関節戦略でいくことのできる限界の距離をみます。

 

 ファンクショナルリーチテストのカットオフ値でですが、20㎝以下で非常に危険、平均25㎝~30㎝で、30㎝以上は転倒リスクはかなり低いとされています。

 この基準をもとに検査して頂けるといいかと思います。

 

最後に

 ファンクショナルリーチテストだけでも見ようと思えばいろいろなことが見えてきます。後半の説明は動作分析に近いものが多い印象ですが、そもそも動作分析とはこういうものなんじゃないでしょうか。

 

 解剖学や運動学と現象すり合わせて現状の患者様の状態を知ること。この統合と解釈があるから僕らはプロを名乗れるんでしょうね。なんつって(笑)

 

 もちろん評価は一つではなく複数行い整合性を高めないといけません。しかし日常のリハビリ内で自然に行う動作が一番自然なバランス戦略の切り替えを行っているのではないかと思います。

 

 あくまでファンクショナルリーチテストを行う意義ですが、客観的な数値化できる動作であって簡便に実施可能ということで今回紹介させていただきました。今回紹介した検査の意義以外にも見て取れる所見は多いのではないでしょうか?

 

 基礎から応用まで遠回りを繰り返しながら前に進んでいきましょう。それではお疲れさまでした。明日かも臨床頑張りましょう。