歩行時の体幹前傾を脊柱起立筋に注目し評価治療を行う具体例
今日は体幹前傾位で歩行している人へ治療介入を行っていて思ったことを考察していこうと思います。
最近はコンスタントに更新できており、自分としても来年度に向けてモチベーション高めに臨床へ取り組めていると実感しております。
真面目に取り組んでいると疑問は絶えず出現していることにも気付くことができますね・・・。
すいません。雑談でした。本題に戻ります。
よく臨床現場で体幹前傾して歩いている方がいますね。そんな患者様に対して、「体が前に倒れてきたよ。胸張って・・・」と指示している場面をよく見かけます。その指示で体幹前傾が良好な形で修正されるのであればいいです。しかし多くの場合はそうではない気がしています。
具体的に言いますと、頚部屈曲、上位胸椎屈曲、下部胸椎から腰椎部にかけて伸展させて、股関節屈曲位を作り歩行してしまうんですよね。
これって正常なのか、良姿勢なのかと疑問に思いました。明らかに腰椎に負荷が増大しています。
今回はこのような姿勢をとってしまう患者様に対し行う評価と介入について、脊柱起立筋に着目し考えていきます。
少し関わった症例をイメージしながら書いておりますので、症例紹介チックなものになってます。
今日のメニュー
・体幹前傾位での歩行はどこの筋力低下か
・評価項目と評価結果
・具体的な治療と結果
・ちょっと感想
・体幹前傾位での歩行はどこの筋力低下か
僕が普段体幹前傾を評価するときにポイントは、部位ごとに分けてみることです。具体的には、3つに分けてみています。頚部と上位胸椎・下位胸椎・腰椎と骨盤です。因みに肩甲帯は頸椎と上位胸椎部の領域に分類しています。
この3つの領域でどこの部位の筋が筋力低下をしているのかを確認して、その部位にアプローチしましょうということになります。
まずはそれぞれの部位の主動作筋について軽く確認していきます。
頚部伸展と上位胸椎の伸展は僧帽筋の上部線維や脊柱起立筋の中の最長筋などが主動作筋になりますね。
ここで腰部多裂筋との関係について触れようと思います。最長筋の深層には多裂筋が存在しますが、筋のボリューム的には最長筋の方が大きいです。しかし腰部になると最長筋は腱膜組織となりボリュームが最小となります。最長筋とは逆にに多裂筋はボリュームが最大となります。
つまり胸椎部は最長筋が伸展の主動作筋となり、腰部では多裂筋が主動作筋になります。
下部胸椎部は脊柱起立筋の最長筋や腸肋筋により伸展します。
腸肋筋は体幹伸展のサブユニットです。
一度体幹屈曲位での座位(安静座位)になってみてください。この場合は脊柱起立筋の外側が緊張してきます。しかし機能的座位になった際は、緊張部位が中枢側へ移動すると思います。この時腸肋筋から最長筋に緊張がシフトしていることになります。
そして腸肋筋は上部体幹の運動を行う際の土台として広背筋とともに緊張を作ります。そもそも体幹の外側に付着しているため体幹の伸展要素としては非効率ですこれらの理由から腸肋筋は体幹伸展のサブユニットとなるわけです。
しかし最長筋の筋力低下があり動作不十分の場合には、腸肋筋が主動作筋として機能を果たそうとするわけです。
腰椎伸展と骨盤前傾は腸腰筋と多裂筋です。
繰り返しになりますが、このどれが筋力低下をしているかを確認していきます。次の項目で評価していきましょう。
・評価項目と評価結果
トップダウンでの評価についてはこちらもどうぞ。
検査項目は、座位でのアライメント観察、上肢挙上と座位でのリーチ動作です。股関節の屈曲制限がある場合は、立位でのリーチ動作や高座位で股関節の影響を最小限にしましょう。
まあ僕の評価の定番ですね。ワンパターンともいう(笑)
この2つないし3つの動作の中で動作分析と触診、誘導を行って動作改善が図れるかどうかで評価します。
座位姿勢のアライメント評価です。
座位姿勢では頚部が前方突出位になっているのかや体幹の屈曲位か(円背しているか)どうかをみます。
体幹伸展位(機能的座位)のアライメントを確認します。このときに上肢をベッド面や大腿に当てて体幹の伸展を行った場合は広背筋や腸肋筋(体幹の伸展ではサブユニット)の筋収縮で行っている可能性があるので触診してみましょう。
機能的座位になるときに下位胸椎伸展たや股関節伸展を行っている場合は胸椎部の最長筋の筋力低下がうかがえます。
しかし最初から肩甲骨が僧帽筋中部線維などの過緊張により内転位になり、見かけ上は体幹伸展ができているように見える場合があります。このときは肩甲骨のアライメントを修正する(ストレッチや可動域練習、口頭指示など)ことで本来のアライメントを確認できるようになります。
上肢挙上検査です。
次に上肢挙上についてです。上肢挙上を行う理由としては、脊柱起立筋の中で最長筋の筋活動が優位に増加することが分かっているからです。ただ体幹の伸展を行ってもらっても脊柱起立筋の中のどの筋が働いているのか分かりません。
上肢挙上の最終域には駆らなず胸椎部の伸展が必要になること。その時に最長筋の収縮が優位になることが分かっていれば、動作困難な場合や代償が入っている場合などに目視可能です。
リーチ動作についてです。
最後にリーチ動作をみていきます。このときに見ておきたいポイントとしては、肩甲帯の前方突出が可能かどうか、胸椎後弯の減少と腰椎の前弯、股関節の屈曲が出現しているのかです。
ファンクショナルリーチテストについては、興味があればこちらの記事も見てみてください。
そしてできていない部分の介助または誘導を行い動作改善が可能であるのかを検査します。
肩甲帯の前方突出の介助誘導例
①検査側肘関節屈曲位から伸展位に他動運動で実施。
②肘関節の完全伸展位に持っていきその肢位で長軸方向中枢側へ圧迫します。
③その後前方リーチ方向へ誘導を行う。
この時に肩甲帯周囲の筋緊張が抜けないように誘導すると体幹伸展位のまま股関節の屈曲まで誘導できます。このときに先ほど気になっていたアライメントの改善が可能であれば肩甲帯周囲筋の筋力低下を疑うわけです。
上位胸椎伸展介助誘導例
①前上方や前方へリーチ動作を自動運動で実施。
②動きの少ない胸椎の上か下の肋骨を軸に肋骨の向きに合わせて手を添える。
③リーチ動作に合わせて肋骨の後方回旋を誘導。
このときに軸とする肋骨レベルを前後にする理由としては、一番アライメントが崩れている部分というのは動きにくいためです。一度やってみると分かるので、頚部前方突出位の近くの友達に手伝ってもらってやってみてください(笑)
前上方へリーチの場合は上肢挙上が増加するため、体幹が伸展位になりやすく、肋骨部の誘導を行う場合は介助量が軽減するためです。
評価判定はアライメントが修正された状態で前方リーチできているかです。
腰椎・骨盤レベルの介助誘導例
骨盤の前傾を誘導しましょう。
①仙骨レベルに両方の親指を当てて、4指は骨盤側面に向けて添わせます。
②前方リーチに合わせて骨盤の前傾を誘導。
このときに仙骨レベルで骨盤の前傾を促す理由としては、L3レベルの多裂筋の誘導を行うためです。詳しいことについては、上の方に書いてますのでそちらをもう一度確認してください。
判定基準は他の誘導と同じく動作の改善が図れたかどうかです。
・具体的な治療と結果
ここではよく僕が行っている治療について紹介します。
上部胸椎最長筋の促しについて
①壁に手をついてできるだけ手を壁の上を触るように伸ばしていってもらいます。
②肩甲骨内側面に母指球と母指を当てて母指を尾側方向へ引き下げながら肩甲骨の前方回旋と挙上を誘導していきます。
下位胸椎最長筋の促しについて
①同様の動作指示下状態
②下位胸椎は肋骨の後方回旋を検査時と同様に促します。
ポイントは下位肋骨レベルでは胸郭の拡大が生じるので肋骨の運動方向を把握してその方向に促す必要があります。
動作実施の際は、可動域の影響で疼痛が出やすいので、注意が必要です。
腰椎の前弯と骨盤前傾について
①上肢挙上90°で壁に手をついてもらいます。
②一旦踵へ荷重を促す。
③胸骨下端を壁に近づけるように指示
④介助者が踵荷重をぎりぎりまで固定。もしくは骨盤部より前傾を誘導。
ポイントは踵へ荷重を促すことです。理由としては、下腿三頭筋からハムストリングスへの収縮を誘導するためです。この動作を入れることで骨盤前傾に必要な下肢の筋緊張を誘導できるというわけですね。
ちょっと感想
もちろん可動域がない場合は可動域を改善しないといくら筋力増強できても改善は見込めません。可動域が確保できない場合は、現状の姿勢で転ばないように戦略を練っていきましょう。
動作の誘導や介助については、あくまで例ですので他の方法で促せる方は普段使い慣れた評価を使うことで評価精度を一定に保つことができるのでそちらでお願います。やり方が分からない方はお使いください。
合わせて体幹についての考え方を記事にしているのもあるのでこちらも興味があればみていってください。
高齢者の筋力低下については興味あればこちらをみてください。
こうしてみると解剖学的知識があれば簡便に評価可能ですが、客観的なものと量的な評価が少し不足しがちな印象がありますね・・・。今後は量的な評価と質的な評価を療法実施しながら治療していけたらいいかなと思います。
今後も理学療法に関わる記事を書いていきますのでよろしくお願いします。