brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

着座動作の運動学

 今日は着座動作について勉強してみました。その勉強の中で学んだことを紹介しします。

 

 今日のテーマは着座動作の運動学です。

 

 皆さんは着座動作の練習を積極的に行っていますか?

 僕は行っていませんでした。ですが、立ち上がり動作の練習を行わない日は無かったと思います。この要因の一つは、立ち上がり動作の逆パターンが着座だと思っていたことがあげられます。

 

 しかし現実は全く違う動作であると思います。まず重心移動の方向が違います。そしてそれに伴う運動学も違います。

 

 立ち上がり動作は離殿の開始までに骨盤を前傾します。離殿後も骨盤は前傾を保持したまま動作終了します。着座は下肢の屈曲を行う際に骨盤は後傾します。臀部接地直前になって初めて骨盤は前傾します。

 

 さらに立ち上がり動作は骨盤周囲筋の筋活動が大事です。立ち上がりについては今後まとめていきますが、多裂筋と腸骨筋などが体幹のアライメントを整え、離殿に必要な前方への重心移動を行います。

 

 着座で必要なことは足関節の底屈筋(主に下腿三頭筋)です。

 

 つまり、身体の動きや筋活動も違うことになります。立ち上がりの逆再生ではないことが分かります。

 よく患者様で上手に立ち上がれるけど上手く座れていない。これは運動様式の違いから生じていたものだったんですね。

 

 今日は最初の説明が長くなりましたが、これについてもう少し掘り下げていきたいと思います。

 

今日のメニュー

・足関節背屈の必要性

・下肢の筋活動について

・骨盤の運動について

・最後に

 

足関節背屈の必要性

 

 まず足関節の必要可動域は5°程度です。背屈しない着座動作を行うと足圧中心と重心の位置にズレが生じます。着座動作は後方かつ下方への重心移動を伴う動作です。

 

 しかし足関節の背屈が生じていない着座は前足部での荷重を行うため前方に足圧中心があります。

 

 これにより重心位置が支持基底面から大きく外れることになり、急激な着座になるわけですね。つまり後方へ転倒することになります。

 

 さらにいうと、足関節の背屈が生じるため股関節と膝関節は協調して屈曲を行うことができるのです。

 

 運動学で説明すると、足関節の背屈が出現し、協調して膝関節と股関節の屈曲が生じた。このようになりますね。

 

 足関節が背屈することではじめて重心を下方へ移動させながら動作が可能になるということです。

 

下肢の筋活動について

 

 抗重力伸展位にて足関節背屈位は背屈方向に下腿が倒れていきますから背屈筋の筋活動よりも底屈筋の働きが重要になります。収縮様式としては下腿三頭筋の遠心性収縮です。

 

 ここが立ち上がり動作とは大きく異なりますね。立ち上がり動作の場合は、前脛骨筋による足関節背屈の筋活動は重要になります。

 

 前脛骨筋の筋活動により足底圧を後方へ移動するために必要です。着座動作はそもそも後方かつ下方への重心移動が体重の移動で行われますからあえて足圧中心を後方へ移動させる筋の活動は必要ないです。ここで前脛骨筋の過活動が生じると足底接地が不良となるため安定した着座は困難になります。

 

次に大腿四頭筋の筋活動ついてです。着座時には膝関節伸展はそんなに必要ありません。膝関節の屈曲は足関節背屈運動が起きたことで生じる現象でしかないからです。

 

また立ち上がり動作と共通している部分になりますが、体重を足底面内に保持するために骨盤の後傾による体幹の軽度屈曲位の2つが重要になります。この場合は体幹屈曲は膝関節と同様に現象です。

 

 だから膝関節や腰部骨盤はスタビリティの関節って言われるんですかね?脱線しました(笑)

 

 次の項目で説明していきます。

 

骨盤の運動について

 

 着座する際に骨盤を前傾位にして座ることを指導してしまいますが、実際は骨盤後傾位で下肢屈曲が出現し臀部接地最終域で前傾が出現し着座します。

 

なぜ着座時は最終域だけ前傾なのか・・・。

 

答えは体重の移動中心による動作コントロールから筋による動作コントロールに切り替えるためだと思います。理由としては2つあります。

 

 1つ目が実用的な動作(普段日常で行う動作)は速度が大事です。体重移動のみの動作は安定性と筋疲労が少ない動作となりますが、速度がかなり遅くなります。

 

 2つ目が1つ目に関係しますが、骨盤を前傾にすることで対側方向性運動リズムという筋パターンに活動を起こせるため安全にまた迅速な動作が可能です。しかし常に筋活動を伴う動作では筋疲労が著明になってしまうので最小限に抑える必要があります。

 

 対側方向性運動リズムとは、腰椎骨盤リズムと骨盤と股関節のリズムが生じ、それに伴って腰部多裂筋ー大殿筋・腸腰筋ハムストリングスー下腿三頭筋が主に活動するシステム。シナジーとも筋膜連鎖とも言われています。

 

 この運動パターンのスイッチが骨盤の運動でONになります。

 

最後に

 

 最近はいろいろな勉強会に参加して、講師の方によって大事にしていることやいろんな動作分析があり何が正しくて何が間違っているのか。また自分に何が足りなくて効果を出せていないのか。結局リハビリで何を評価してどこを治療すればいいのか分からなくなります。

 

 そんな中で思うことは、いっぱいいろんなことを学んで全部を抽象化して、共通していることや本質だと感じる部分を自分の中でストックしていくことが必要だと思います。きっと学んだこと全て正しく、そしてすべてが断片的なものなのでしょう。

 

 今回紹介している内容も勉強会をもとに、過去に学んだ勉強会と教科書で学んだこと加えて解釈したものとなっています。

 

 皆さんの臨床の助けやモチベーションを高めるキッカケになればと思います。これからもよろしくお願いします。