brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

今更聞けない基礎解剖学「股関節可動域と変形性股関節症の治療基礎知識」(リハビリ)

こんにちは、脳筋王です。

 

 今日もリハビリに役立つ基礎知識をお伝えしていきます。今日はどちらかというと変形性股関節症に対する基本的なリハビリ方針について説明します。

 

1、リハビリの目的

 

 ADLの改善です。そのために疼痛軽減と可動域の拡大が重要になります。

 

2、可動域制限の原因

 股関節最終域の可動域制限に関与するものとしては、股関節の靭帯・関節包・周囲筋です。これにプラスして隣接する骨盤や腰椎の影響(腰椎骨盤リズム)を受けます。

 

 腰椎骨盤リズムとは、股関節屈曲時に大腿骨頭の動きに合わせて腰椎の屈曲と骨盤の後傾が生じて120°の屈曲が生じることを言います。

 

 股関節伸展に関しては、他の記事にして詳しく説明してますので興味がある方はそちらも確認してみてください。

 

3、疼痛の原因

 

 次に疼痛について考えていきましょう。変形性高関節症で生じる疼痛は、3つあります。

 

①関節裂隙の狭小化による機械的ストレスによるもの

②損傷により遊離した組織に対する自己免疫による炎症

③関節唇損傷後の肥厚によって関節内圧の上昇したとき

 

4、病期について

 

 画像所見から前期・初期・中期・末期に分けられます。それぞれの病期によってリハビリ方針が変わります。

 

・前期から初期

 関節裂隙は保たれています。臼蓋形成不全の代償として、関節唇の肥厚が疼痛につながっている可能性が高い時期です。

 

・中期から末期

 

 関節裂隙が中等度から高度に損失してます。関節不安定性の代償で腰椎過前弯・骨盤過前傾になります(骨盤前傾は臼蓋に対して大腿骨頭の被覆率を増加させ、安定性が向上する)。

 

5、THA(人工関節全置換術)の特徴

 

 THAは、臼蓋と骨頭を置換するためROMは改善されています。

 

 ここで注意したいポイントとしては、病前より生じていた筋性・靭帯性の短縮によるROM制限が生じていた場合は影響されます。病前の可動域制限の制限因子についてわかる場合は、知っておくことも重要になります。

 

6、ADL動作で獲得すべき動作

 

 靴下を履く動作・足の爪を切る動作・靴ひもを結ぶ動作です。生活様式が和式の場合は、正座も重要になります

 

7、リハビリ評価項目

 

 (a)インピンジメントの有無、筋短縮している筋

 (b)ROMは、抵抗感・疼痛・クリック音

   →股関節の伸展制限は、腰痛や歩行障害につながる。

 (c)画像から骨盤径(仙腸関節の線から恥骨結合に向けた垂線の距離)

   →骨盤径が大きい場合は、骨盤前傾、小さい場合は骨盤後傾になりやすい。

 (d)各種特殊評価

   →Ober test、Thomas test、Ely test、FABER test、

    前方後方インピンジメントテスト

    close-packed position(不動肢位)のROM(関節唇・靭帯の損傷の有無)

    →損傷によっては、関節可動域拡大に影響する

 

 closed-packed positionは、股関節最大伸展・軽度内旋位にした際(靭帯が最も緊張する肢位)の可動域制限の有無で判断します。

 

8、リハビリのポイント

 

 ・ROM拡大には、筋緊張緩和と疼痛がでないように行うことが重要。

   自動介助運動→他動運動→ADL動作

 

 ・後方の関節包と外旋筋を伸張させるときは、股関節屈曲・外転・内旋位にする。

 

 ・爪切りなどの動作では、股関節の屈曲・外転・外旋の複合動作で行うと骨盤の代償

  が軽減する。

  →病前評価が分からない場合でも実施可能なため便利です。

 

9、今日のstep-up講座

 

 筋力低下による片脚立位の支持性低下には、小殿筋の筋力向上がポイントです。片脚立位の際には中殿筋よりも小殿筋の筋活動の方が大きいとされる報告があります。

 

 小殿筋のリハビリでは低負荷で股関節伸展・外転運動を行うと賦活でいます。このポジションが取れない場合は、膝関節伸展位で股関節の内外旋運動を行います。

 

10、あとがき

 

 動作練習を行うにも関節可動域制限がある場合は、動作の崩れにつながっている場合が多い印象をリハビリを行っていく中で感じます。

 

 制限がある場合は制限の有無だけではなく、どの筋が短縮しているかや靭帯や関節唇の損傷の有無で予後予測もできるため評価できる指標を自分の中で持っているといいと思います。

 

 今後特殊テストについてもまとめておきますので、リハビリ前に確認しておくと便利です。

 

 今回の内容で分かりにくい場合はコメント等でお知らせください。今後も修正していきたいと思います。

 

 またすぐに読める程度の文字数で明日につながる内容を記事にしてあげていきたいと思いますので、よろしくお願いします。