brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

今更聞けない基礎解剖学「股関節伸展可動域制限」(リハビリ)

 
 こんにちは、脳筋王です。

 
 今日も明日の臨床に役立つリハビリの基礎知識について勉強していこうと思います。

 今日は股関節の可動域制限についてです。可動域制限があると立ち上がりや歩行動作において獲得を難しくさせる原因になります。

 全てに対しての説明をすることは困難ですので筋性の制限を中心に説明します。


1、股関節の伸展制限の原因

 屈曲拘縮の原因は、長期的な屈曲位保持です。さらに深く掘り下げると大腿骨頚部骨折等の外傷に伴う炎症と浮腫です。
炎症が伴うと痛みが出ます。炎症が出現すると炎症性サイトカインなどの影響で血管拡張を起こし、浮腫になります。浮腫は侵害受容器の刺激が痛みを出現させます。
 
 痛みを軽減しようとするとき股関節屈曲位にします。屈曲位(約60°)にすることで関節内圧が高まり浮腫が一時的に低下します。痛みを軽減させるため、股関節を屈曲位で維持することで関節拘縮につながります。

 このようにして日常で普通に活動している方でも伸展制限に繋がったりするものです。

 皆さんがこのような過程で生じている訳ではありません。しかし、これらの原因で生じている場合は、治療方針が立ちます。

 1つは、薬物療法で炎症を抑えます。もう一つは、運動療法です。しかし骨折が原因の場合は、医師の出すプロトコルに従って下さい。

 それでは、次の項目で拘縮する部位について勉強していきましょう。
 

2、関節拘縮の部位

 拘縮する部位は、関節包と前方にある靭帯、筋です。靭帯は、恥骨大腿靭帯、腸骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯の一部です。筋は、腸腰筋と内転筋、大腿筋膜張筋、縫工筋、大腿直筋です。

 筋肉いっぱいあって分かりにくいですね。簡単な検査方法としては、足底を浮かせた状態の座位姿勢の確認と背臥位での股関節90°屈曲位での内外旋可動域、筋の触診などです。

 筋性か靭帯性なのか確認しないといけないです。

 エンドフィールを確認しましょう。そして制限になる筋の触診をして硬さを確認します。

 最終域なのに、制限になり得る筋に余裕がある場合は靭帯性です。他には、背臥位膝関節伸展位で股関節外旋してみましょう。屈曲位より制限あれば靭帯性かもしれません。腸骨大腿靭帯と恥骨大腿靭帯は、股関節外旋位で緊張します。
 
 筋をみる時は、大雑把に分けることがリハビリの限られた時間の中では重要です。股関節の内旋可動域低下している時は、大腿筋膜張筋かなと疑います。股関節の外旋可動域が低下している時は、腸腰筋、内転筋かなと疑います。


3、リハビリについて

 個人的な意見ですが、短縮と筋緊張亢進では治療を変えます。


 (1)短縮の場合は伸張します。

①架橋結合の増加
 膠原繊維の架橋結合が増加すること伸張性が低下します。伸張して架橋結合を破壊しましょう。

②筋線維内のミオシンとアクチン
 ミオシンにあるトロポニンの頷きアクチンを引き込みますが、トロポニンが頷いた状態で固まってしまうことで伸張性が低下する。

③筋線維の線維方向がランダム化
 伸張に適した方向以外の線維が増加するため伸張できなくなります。

 どの制限でも伸張刺激によって改善が図れるそうです。


 (2)筋緊張亢進の場合

 リラックスできる姿勢を作り短縮位にします。短縮位にして少し放置。緩んできたら伸張して可動域を拡大していきます。

 こちらの方法は、ポジショナルリリースといいます。短縮位にすることで筋紡錘の求心性線維に抑制をかけて筋の緊張を低下させた後、伸張刺激を加えて可動域を拡大する方法です。

 (3)靭帯性の場合

 関節モビライゼーションを行います。先ほど説明した通り腸骨大腿靭帯も恥骨大腿靭帯も股関節外旋位で伸張されるため、大腿骨近位部を把持し、骨頭を外旋させるように牽引したり、大腿骨頭を引き離すように牽引したりしまう。

 大腿骨の近位部を把持する理由としては、しっかり目的の部位に伸張を加えるためと高齢者の場合は骨密度低下で骨が非常にもろくなっているため長軸上で剪断力をできる限り少なくするために行っています。

今回も少し長めになりましたが、リハビリを行っていく中で関節可動域制限は動作にかなり大きな影響を与えることや治療が難しいと感じることが多いと思います。高齢者になるとどこかに必ずと言っていいほど制限を持っているものです。

 今回の内容が皆さんの明日からのリハビリに役立てば幸いです。分かりづらい点や修正点があればご意見していただければ幸いです。今後もいろいろなリハビリに役立つ情報を発信していきますのでよろしくお願いします。