brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

超簡単な評価で股関節と足関節の問題かを絞る方法①

 今日は短めに臨床の評価で僕がよく使っていれる検査とみているポイントについて紹介していこうと思います。

 

 今日はタイトルにある通り動作能力の著しい低下の原因が股関節にあるのか、それとも足関節あるのかを見極める検査を紹介します。

 

 まず最初に注意ですが、患者様の動作能力の低下の原因が単一の関節のみに存在していることは少ないです。外傷性の整形疾患であれば単一のリハビリで能力の劇的な改善もあるとは思いますが・・・。

 

 廃用症候群などは全身的な筋力低下を引き起こしますし、加齢に伴う老化(1次性サルコペニア)が原因の場合もあります。もしこの辺の話に興味のある方はこちらをご覧ください。簡単ではありますがまとめてあります。

 

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 さて、上記の前提条件を踏まえた上で単関節に対してアプローチする意義です。それは自分の行っているリハビリが効果あるのかを検証するためです。さらにリハビリ時間が限られている中で効率的に時間を使うには、あれもこれもと多くの部位に触れている時間はないです。

 

 評価についてもボトムアップ的に全ての要因を検査して精査する方が確実に良い治療介入を可能になるとは思いますが、簡便に検査を行ってすぐに治療に移った方が患者様のためになると最近思っています。

 

 というわけで、学会発表するわけではないのであれば、動作といくつかの理学療法評価学で学ぶような検査(笑)をスクリーニング的に行って原因を絞っていくと良いのかなと思います。

 

 前置きが長くなりました。でも理由であったり、根拠が必要で僕らの一番弱いポイントなんではないかと思いますのでいちいち考えていきたいと思ってます。

 

 今日はイメージ症例を紹介し検査項目2つでみていきます。

 

今回のメニュー

・イメージ症例

・上肢支持なしでの立ち上がり動作と着座動作

・大きい方向転換と小さい方向転換

・一歩目の足のすくみの統合と解釈

・椅子に近づいた時の統合と解釈

・さいごに

 

イメージ症例

 

 今回は歩行可能症例を想定します。通所リハビリを利用されており、病院に来院されて長いリハビリ室までの廊下を一人で歩くことができます。人とお話しするのが好きでよく病院スタッフと会話を楽しんでいる様子が印象的です。リハビリと他の患者様との会話を楽しみに毎週通院しています。しかし椅子に座ろうとしたり、一回話に夢中になって立ち止まり話し終えた後に歩き始めると足がすくんでしまい小刻みなステップを繰り返してしまうことが困っているとのことでした。

 

 普通に考えると目標物へ近づいた時や歩き始めに足がすくんでいることからパーキンソン病を疑いますね。パーキンソン病と聞くと難病です。リハビリの目標を無意識下で現状の歩ける状態を維持しようと考えてしまいます。

 

 ここで考えたいことがまずパーキンソン病の影響なのかそれとも筋力低下などの要因から足のすくみが生じている可能性があるのか確認し、治療対象を見極めることが重要です。

 

 廃用症候群のリハビリとそんなに変わらないです。ただ原因の一部に脳神経系が含まれるだけです。

 

 そしてその際に股関節なのか足関節なのかを見極めることが必要になります。

なぜ今パーキンソン病の症状で語り始めたかというと実際にありそうな症例を想定した方が現場で使いやすいのではないかと思いましたので少し複雑にしました。

 

上肢支持なしでの立ち上がり動作と着座動作

 

 ここからは簡単にといっていたので簡単に説明します。大前提として立ち上がり動作では座位姿勢から離殿直前までで決まると言われています。この時に重要になるのが体幹と股関節の運動学です。つまり立ち上がりが困難な症例は主に股関節周囲に問題があるということです。

 

 次に着座動作ですが、着座は逆に重力によって勝手に沈み込んでいく身体をコントロールしなくてはならない動作です。この時に特に大事になるのが足関節の底屈モーメントです。つまり急激な着座を行ってしまう場合は足関節の運動学に問題がある可能性が高いと判断できます。

 

 簡単ですがまとめると

・立ち上がり動作困難で着座動作は比較的上手 → 股関節の問題

・立ち上がり動作比較的上手で着座動作困難  → 足関節の問題

 

こんな感じに絞ることができます。しかし動作観察一つで問題点を絞るのはかなり危険です。あと1つか2つ検査を実施することをおススメします。

 

 

今回の着座動作について軽く確認したい方はこちらをご覧ください。

 

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 また興味があればトップダウンの評価についてはこちらをご覧ください。

 

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 FRTについてはこちらをどうぞ。

 

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次回は大きい方向転換と小さい方向転換について書いていきます。

着座動作の運動学

 今日は着座動作について勉強してみました。その勉強の中で学んだことを紹介しします。

 

 今日のテーマは着座動作の運動学です。

 

 皆さんは着座動作の練習を積極的に行っていますか?

 僕は行っていませんでした。ですが、立ち上がり動作の練習を行わない日は無かったと思います。この要因の一つは、立ち上がり動作の逆パターンが着座だと思っていたことがあげられます。

 

 しかし現実は全く違う動作であると思います。まず重心移動の方向が違います。そしてそれに伴う運動学も違います。

 

 立ち上がり動作は離殿の開始までに骨盤を前傾します。離殿後も骨盤は前傾を保持したまま動作終了します。着座は下肢の屈曲を行う際に骨盤は後傾します。臀部接地直前になって初めて骨盤は前傾します。

 

 さらに立ち上がり動作は骨盤周囲筋の筋活動が大事です。立ち上がりについては今後まとめていきますが、多裂筋と腸骨筋などが体幹のアライメントを整え、離殿に必要な前方への重心移動を行います。

 

 着座で必要なことは足関節の底屈筋(主に下腿三頭筋)です。

 

 つまり、身体の動きや筋活動も違うことになります。立ち上がりの逆再生ではないことが分かります。

 よく患者様で上手に立ち上がれるけど上手く座れていない。これは運動様式の違いから生じていたものだったんですね。

 

 今日は最初の説明が長くなりましたが、これについてもう少し掘り下げていきたいと思います。

 

今日のメニュー

・足関節背屈の必要性

・下肢の筋活動について

・骨盤の運動について

・最後に

 

足関節背屈の必要性

 

 まず足関節の必要可動域は5°程度です。背屈しない着座動作を行うと足圧中心と重心の位置にズレが生じます。着座動作は後方かつ下方への重心移動を伴う動作です。

 

 しかし足関節の背屈が生じていない着座は前足部での荷重を行うため前方に足圧中心があります。

 

 これにより重心位置が支持基底面から大きく外れることになり、急激な着座になるわけですね。つまり後方へ転倒することになります。

 

 さらにいうと、足関節の背屈が生じるため股関節と膝関節は協調して屈曲を行うことができるのです。

 

 運動学で説明すると、足関節の背屈が出現し、協調して膝関節と股関節の屈曲が生じた。このようになりますね。

 

 足関節が背屈することではじめて重心を下方へ移動させながら動作が可能になるということです。

 

下肢の筋活動について

 

 抗重力伸展位にて足関節背屈位は背屈方向に下腿が倒れていきますから背屈筋の筋活動よりも底屈筋の働きが重要になります。収縮様式としては下腿三頭筋の遠心性収縮です。

 

 ここが立ち上がり動作とは大きく異なりますね。立ち上がり動作の場合は、前脛骨筋による足関節背屈の筋活動は重要になります。

 

 前脛骨筋の筋活動により足底圧を後方へ移動するために必要です。着座動作はそもそも後方かつ下方への重心移動が体重の移動で行われますからあえて足圧中心を後方へ移動させる筋の活動は必要ないです。ここで前脛骨筋の過活動が生じると足底接地が不良となるため安定した着座は困難になります。

 

次に大腿四頭筋の筋活動ついてです。着座時には膝関節伸展はそんなに必要ありません。膝関節の屈曲は足関節背屈運動が起きたことで生じる現象でしかないからです。

 

また立ち上がり動作と共通している部分になりますが、体重を足底面内に保持するために骨盤の後傾による体幹の軽度屈曲位の2つが重要になります。この場合は体幹屈曲は膝関節と同様に現象です。

 

 だから膝関節や腰部骨盤はスタビリティの関節って言われるんですかね?脱線しました(笑)

 

 次の項目で説明していきます。

 

骨盤の運動について

 

 着座する際に骨盤を前傾位にして座ることを指導してしまいますが、実際は骨盤後傾位で下肢屈曲が出現し臀部接地最終域で前傾が出現し着座します。

 

なぜ着座時は最終域だけ前傾なのか・・・。

 

答えは体重の移動中心による動作コントロールから筋による動作コントロールに切り替えるためだと思います。理由としては2つあります。

 

 1つ目が実用的な動作(普段日常で行う動作)は速度が大事です。体重移動のみの動作は安定性と筋疲労が少ない動作となりますが、速度がかなり遅くなります。

 

 2つ目が1つ目に関係しますが、骨盤を前傾にすることで対側方向性運動リズムという筋パターンに活動を起こせるため安全にまた迅速な動作が可能です。しかし常に筋活動を伴う動作では筋疲労が著明になってしまうので最小限に抑える必要があります。

 

 対側方向性運動リズムとは、腰椎骨盤リズムと骨盤と股関節のリズムが生じ、それに伴って腰部多裂筋ー大殿筋・腸腰筋ハムストリングスー下腿三頭筋が主に活動するシステム。シナジーとも筋膜連鎖とも言われています。

 

 この運動パターンのスイッチが骨盤の運動でONになります。

 

最後に

 

 最近はいろいろな勉強会に参加して、講師の方によって大事にしていることやいろんな動作分析があり何が正しくて何が間違っているのか。また自分に何が足りなくて効果を出せていないのか。結局リハビリで何を評価してどこを治療すればいいのか分からなくなります。

 

 そんな中で思うことは、いっぱいいろんなことを学んで全部を抽象化して、共通していることや本質だと感じる部分を自分の中でストックしていくことが必要だと思います。きっと学んだこと全て正しく、そしてすべてが断片的なものなのでしょう。

 

 今回紹介している内容も勉強会をもとに、過去に学んだ勉強会と教科書で学んだこと加えて解釈したものとなっています。

 

 皆さんの臨床の助けやモチベーションを高めるキッカケになればと思います。これからもよろしくお願いします。

非効率な学び方

非効率に牛歩のごとき学びでいきましょう。

 

今日は理学療法あんまり関係ない内容になります。

 

 こんにちは。毎日勉強をしていると効率の悪さや結局自分は何について学びたいのか分からなくなることがあります。昨日やったことを忘れていたり、先週の勉強会の内容が思い出せなかったり・・・。

 

このままのやり方でいいのかなと日々思いながら勉強していました。

 

「RANGE-知識の「幅」が最強の武器になる」という本を読みました。この本では幅広く学んで知識に幅を持つことで未経験なものに挑戦するときの武器を手に入れることができます。みたいな内容が書かれていました。

 

 今回は本の紹介をしたいわけではないのでリンクを貼ったりしてません。興味ある方はアマゾンか楽天かどこかで検索してみてください。適当ですいません(笑)

 

 ではこのRANGEを読んで思ったことを書いていきます。大人の感想文みたいなものですね。

 

今回のメニュー

・社会に求められていること

・結局人の身体をみることは未知に対して挑むこと

・やりたいことを見つけることから始まる終着点

 

社会に求められていること

 

 社会が求めている社会人はクリエイティブな思考力と抽象化する能力みたいですね。つまり与えられた仕事をこなしているだけでは満足してくれないということです。任された仕事一つにどれだけの価値や自分らしさを乗せて、必要な人に出来上がった仕事を託すことができるかを問われていると感じています。これができるのかどうかがその人の会社や病院、ひいては社会に存在する価値があるのかどうかと判断されるのだと思います。

 

 

 さて、この考えはRANGEという本を読んだことで考えたことですが、僕は理学療法士をしているので、ことPTとして社会に求められていることは何かということを考えています。

 

 専門性を持つことの他にそこに自分の個性を足して独自のリハビリを展開していくことが求められているのではないかと思います。

 

 医療の専門性について、書籍的にはスペシャリストとジェネラリストというカテゴリーに分けられます。その二つを併せ持ったジェネシャリストという考えもあるようです。

 

 膝が悪いから膝しか見ないはもう2流なのかもしれませんね・・・。もちろん術後リハビリでは必要でしょうが。さらに再発防止とかそもそもなぜ膝にストレスが集中してしまったのかまでケアしないといけないということですね。

 

 

結局人の身体をみることは未知に対して挑むこと

 

 人によって生活スタイルも違えば、既往歴も現病歴も違うため現れてくる症状は似ているように見えて全然違う機能障害が主要因になることもある。

 

 高齢者になればなおさら、人によって千差万別。必要なことは勉強会や教科書で学んだことをそのまま臨床で行うのではなく、目の前の患者様に合わせて必要なもの必要最小限の評価と治療を選択して行っていくことが必要であると思います。

 

 例え膝を悪くしたおばあちゃんが居たとしても腰や足首に治療介入を行うこともあるということです。

 

 そのために膝関節以外を学ぶことや他のビジネスについても学んでみること、一般企業のビジネスモデルについて学ぶ、学びの中で自分にできることは何か?本質はどこなのか?共通概念は存在するのか?・・・。

 

 と論理的思考を働かせて物事を抽象化→概念化(カテゴリー化)していく力を養っていくことが必要なのかもしれません。

 

 在学中に学ぶ一般教養に意味を感じていませんでしたが、現在は大事なことだったんだなとしみじみ感じます(もう遅いですが(笑))。

 

やりたいことを見つけることから始まる終着点

 

 さて抽象化→概念化について触れました。

現代人は抽象化する能力が高くなっているそうです。それは様々な情報に触れる機会も多く、情報を無意識に分けて考える癖が身についているようです。この能力が高い人がIQが高いと一般的に言うそうです。

 

 物事をカテゴリーに意識的に分けていくと自分が多く学んでいることとあまり知らないことがあります。ここでまず自分の好きなものに気付くことができます。

 

 さらに物事をカテゴリー化する論理的思考能力が身についていると一つ一つを学んでいる段階で自分なりの抽象化と本質かが行われます。この自分なりが同じものを学んでも違ったものの解釈につながり新しい概念や方法を思いつくことがあります。

 

 これがセラピストとしての個性でになり、その人の得意なことになるのではないでしょうか?

 

 つまり好きなことや得意とすることは学びが前提で知識に触れて・自分を知って初めて生まれるものではないかと思います。

 

 知識と知識の間に挟まった自分の意見(個性)が積もり積もって自分だけの知識に生まれ変わると思うとわくわくしますね。時々拡大解釈になりすぎてしまうこともあると思いますが、根拠に基づいたオリジナリティであるため大きく外れていることはないのかと思われます。

 

最後に一言

 自分は効率的に学べていないことを自覚してましたが、これからもわき道にそれながらも前に進んでいこうと思います。

 

少しリハビリについて考えたくなった方はこちらもどうぞ。

 

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歩行時の体幹前傾を脊柱起立筋に注目し評価治療を行う具体例

 今日は体幹前傾位で歩行している人へ治療介入を行っていて思ったことを考察していこうと思います。

 

 最近はコンスタントに更新できており、自分としても来年度に向けてモチベーション高めに臨床へ取り組めていると実感しております。

 

 真面目に取り組んでいると疑問は絶えず出現していることにも気付くことができますね・・・。

 

すいません。雑談でした。本題に戻ります。

 

 よく臨床現場で体幹前傾して歩いている方がいますね。そんな患者様に対して、「体が前に倒れてきたよ。胸張って・・・」と指示している場面をよく見かけます。その指示で体幹前傾が良好な形で修正されるのであればいいです。しかし多くの場合はそうではない気がしています。

 

具体的に言いますと、頚部屈曲、上位胸椎屈曲、下部胸椎から腰椎部にかけて伸展させて、股関節屈曲位を作り歩行してしまうんですよね。

 

これって正常なのか、良姿勢なのかと疑問に思いました。明らかに腰椎に負荷が増大しています。

 

今回はこのような姿勢をとってしまう患者様に対し行う評価と介入について、脊柱起立筋に着目し考えていきます。

 

少し関わった症例をイメージしながら書いておりますので、症例紹介チックなものになってます。

 

今日のメニュー

体幹前傾位での歩行はどこの筋力低下か

・評価項目と評価結果

・具体的な治療と結果

・ちょっと感想

 

体幹前傾位での歩行はどこの筋力低下か

 僕が普段体幹前傾を評価するときにポイントは、部位ごとに分けてみることです。具体的には、3つに分けてみています。頚部と上位胸椎・下位胸椎・腰椎と骨盤です。因みに肩甲帯は頸椎と上位胸椎部の領域に分類しています。

 

この3つの領域でどこの部位の筋が筋力低下をしているのかを確認して、その部位にアプローチしましょうということになります。

まずはそれぞれの部位の主動作筋について軽く確認していきます。

 

 頚部伸展と上位胸椎の伸展は僧帽筋の上部線維や脊柱起立筋の中の最長筋などが主動作筋になりますね。

 

 ここで腰部多裂筋との関係について触れようと思います。最長筋の深層には多裂筋が存在しますが、筋のボリューム的には最長筋の方が大きいです。しかし腰部になると最長筋は腱膜組織となりボリュームが最小となります。最長筋とは逆にに多裂筋はボリュームが最大となります。

 

 つまり胸椎部は最長筋が伸展の主動作筋となり、腰部では多裂筋が主動作筋になります

 

 下部胸椎部は脊柱起立筋の最長筋や腸肋筋により伸展します。

 

 腸肋筋は体幹伸展のサブユニットです。

 一度体幹屈曲位での座位(安静座位)になってみてください。この場合は脊柱起立筋の外側が緊張してきます。しかし機能的座位になった際は、緊張部位が中枢側へ移動すると思います。この時腸肋筋から最長筋に緊張がシフトしていることになります。

 

 そして腸肋筋は上部体幹の運動を行う際の土台として広背筋とともに緊張を作ります。そもそも体幹の外側に付着しているため体幹の伸展要素としては非効率ですこれらの理由から腸肋筋は体幹伸展のサブユニットとなるわけです。

 

 しかし最長筋の筋力低下があり動作不十分の場合には、腸肋筋が主動作筋として機能を果たそうとするわけです。

 

腰椎伸展と骨盤前傾は腸腰筋と多裂筋です。

 

繰り返しになりますが、このどれが筋力低下をしているかを確認していきます。次の項目で評価していきましょう。

 

・評価項目と評価結果

 

トップダウンでの評価についてはこちらもどうぞ。

 

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 検査項目は、座位でのアライメント観察、上肢挙上と座位でのリーチ動作です。股関節の屈曲制限がある場合は、立位でのリーチ動作や高座位で股関節の影響を最小限にしましょう。

 まあ僕の評価の定番ですね。ワンパターンともいう(笑)

 

 この2つないし3つの動作の中で動作分析と触診、誘導を行って動作改善が図れるかどうかで評価します。

 

座位姿勢のアライメント評価です。

 

 座位姿勢では頚部が前方突出位になっているのかや体幹の屈曲位か(円背しているか)どうかをみます。

 

 体幹伸展位(機能的座位)のアライメントを確認します。このときに上肢をベッド面や大腿に当てて体幹の伸展を行った場合は広背筋や腸肋筋(体幹の伸展ではサブユニット)の筋収縮で行っている可能性があるので触診してみましょう。

 

 機能的座位になるときに下位胸椎伸展たや股関節伸展を行っている場合は胸椎部の最長筋の筋力低下がうかがえます。

 

 しかし最初から肩甲骨が僧帽筋中部線維などの過緊張により内転位になり、見かけ上は体幹伸展ができているように見える場合があります。このときは肩甲骨のアライメントを修正する(ストレッチや可動域練習、口頭指示など)ことで本来のアライメントを確認できるようになります。

 

上肢挙上検査です。

 

 次に上肢挙上についてです。上肢挙上を行う理由としては、脊柱起立筋の中で最長筋の筋活動が優位に増加することが分かっているからです。ただ体幹の伸展を行ってもらっても脊柱起立筋の中のどの筋が働いているのか分かりません。

 

 上肢挙上の最終域には駆らなず胸椎部の伸展が必要になること。その時に最長筋の収縮が優位になることが分かっていれば、動作困難な場合や代償が入っている場合などに目視可能です。

 

リーチ動作についてです。

 

 最後にリーチ動作をみていきます。このときに見ておきたいポイントとしては、肩甲帯の前方突出が可能かどうか、胸椎後弯の減少と腰椎の前弯、股関節の屈曲が出現しているのかです。

 

ファンクショナルリーチテストについては、興味があればこちらの記事も見てみてください。

 

 

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そしてできていない部分の介助または誘導を行い動作改善が可能であるのかを検査します。

 

肩甲帯の前方突出の介助誘導例

①検査側肘関節屈曲位から伸展位に他動運動で実施。

②肘関節の完全伸展位に持っていきその肢位で長軸方向中枢側へ圧迫します。

③その後前方リーチ方向へ誘導を行う。

 

 この時に肩甲帯周囲の筋緊張が抜けないように誘導すると体幹伸展位のまま股関節の屈曲まで誘導できます。このときに先ほど気になっていたアライメントの改善が可能であれば肩甲帯周囲筋の筋力低下を疑うわけです。

 

上位胸椎伸展介助誘導例

①前上方や前方へリーチ動作を自動運動で実施。

②動きの少ない胸椎の上か下の肋骨を軸に肋骨の向きに合わせて手を添える。

③リーチ動作に合わせて肋骨の後方回旋を誘導。

 

 このときに軸とする肋骨レベルを前後にする理由としては、一番アライメントが崩れている部分というのは動きにくいためです。一度やってみると分かるので、頚部前方突出位の近くの友達に手伝ってもらってやってみてください(笑)

 前上方へリーチの場合は上肢挙上が増加するため、体幹が伸展位になりやすく、肋骨部の誘導を行う場合は介助量が軽減するためです。

評価判定はアライメントが修正された状態で前方リーチできているかです。

 

腰椎・骨盤レベルの介助誘導例

骨盤の前傾を誘導しましょう。

仙骨レベルに両方の親指を当てて、4指は骨盤側面に向けて添わせます。

②前方リーチに合わせて骨盤の前傾を誘導。

 

 このときに仙骨レベルで骨盤の前傾を促す理由としては、L3レベルの多裂筋の誘導を行うためです。詳しいことについては、上の方に書いてますのでそちらをもう一度確認してください。

判定基準は他の誘導と同じく動作の改善が図れたかどうかです。

 

・具体的な治療と結果

ここではよく僕が行っている治療について紹介します。

 

上部胸椎最長筋の促しについて

①壁に手をついてできるだけ手を壁の上を触るように伸ばしていってもらいます。

②肩甲骨内側面に母指球と母指を当てて母指を尾側方向へ引き下げながら肩甲骨の前方回旋と挙上を誘導していきます。

 

下位胸椎最長筋の促しについて

①同様の動作指示下状態

②下位胸椎は肋骨の後方回旋を検査時と同様に促します。

 

 ポイントは下位肋骨レベルでは胸郭の拡大が生じるので肋骨の運動方向を把握してその方向に促す必要があります。

 

動作実施の際は、可動域の影響で疼痛が出やすいので、注意が必要です。

 

腰椎の前弯と骨盤前傾について

①上肢挙上90°で壁に手をついてもらいます。

②一旦踵へ荷重を促す。

③胸骨下端を壁に近づけるように指示

④介助者が踵荷重をぎりぎりまで固定。もしくは骨盤部より前傾を誘導。

 

 ポイントは踵へ荷重を促すことです。理由としては、下腿三頭筋からハムストリングスへの収縮を誘導するためです。この動作を入れることで骨盤前傾に必要な下肢の筋緊張を誘導できるというわけですね。

 

ちょっと感想

 もちろん可動域がない場合は可動域を改善しないといくら筋力増強できても改善は見込めません。可動域が確保できない場合は、現状の姿勢で転ばないように戦略を練っていきましょう。

 

 動作の誘導や介助については、あくまで例ですので他の方法で促せる方は普段使い慣れた評価を使うことで評価精度を一定に保つことができるのでそちらでお願います。やり方が分からない方はお使いください。

 

合わせて体幹についての考え方を記事にしているのもあるのでこちらも興味があればみていってください。

 

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高齢者の筋力低下については興味あればこちらをみてください。

 

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 こうしてみると解剖学的知識があれば簡便に評価可能ですが、客観的なものと量的な評価が少し不足しがちな印象がありますね・・・。今後は量的な評価と質的な評価を療法実施しながら治療していけたらいいかなと思います。

 

今後も理学療法に関わる記事を書いていきますのでよろしくお願いします。

高齢者の筋トレ効率的な負荷量と方法

 先日高齢者の筋力低下についてに話しを考察させていただきました。今回は、「じゃあどうすればいいのさ。」という問いについて考察していこうと思います。

 ちょっと長いので気になるところだけでもチェックしてみてください。

 

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今日のメニュー

・MMTをもとにした高齢者に必要な筋力

・効果的な負荷と負荷量はどの程度か

・効果的な運動や優先順位

・ちょこっと感想

 

1、MMTをもとにした高齢者に必要な筋力

 

 まずMMTの6段階をそれぞれ数値化しましょう。MMT5レベルは最大筋力となりますので、100%とします。そこから順番に数値が低くなっていきます。軽く図のような形で紹介します。

 

MMT5:100%

MMT4:90%~50%

MMT3:40%~20%

MMT2:20%~10%

MMT1:10%以下

MMT0:収縮無し

 

 このようになります。この基準は僕が設定したものではなく、文献で出てきた内容になります。またMMTの文献は調べればすぐに出てきます。エビデンスを気にするのであればググってください。

 

そして日常生活を送るために必要な筋力はどれくらいなのかについてです。

 

 健常高齢者が歩行に使う筋力は、最大筋力の20%。階段昇降でも30%になります。MMTでいうところの3レベルで実施可能ということです。

 

 しかし最大筋力が健常高齢者の30%しかない場合には、他の記事に書いた通り何かあって長期臥床をした際にADL動作に支障をきたしてしまうことや動作パフォーマンスの低下につながるので余力をもった筋力があることが望ましいです。

 

次に高齢者に必要な筋持久力についてです。

 

 持久力について考えるには筋の特性について知っておく必要があります。

 

 筋は収縮特性によりS型(遅筋系)・FR型(速筋系)・FF型の3つに分けます。左から順に筋発揮できる力が強くなり、瞬発力も増加、閾値も高くなります。しかし持久力については順番に低下します。

 具体的にはS型が10分以上収縮持続可能に対し、FR型は10分まで、FF型は2分しか収縮持続困難で筋疲労します。

 

 そして重要なことがあります。これはサイズの原理に基づき、運動単位の動員数増加とともにS型→FR型→FF型と順番に動員していくわけですね。

 

 逆にいうとFF型が働いているときは、FR型とS型はすでに動員されていることになります。つまり速筋系を使用した動作というのは最大で10分までしか同じパフォーマンスで動作遂行が困難ということです。

 

 これを崩れとリンクさせると、2分以内に崩れが著明に見られたり、ふらつきが出現した場合はFF型まで動員した最大筋力での動作であるということが推測されます。10分以上できたのであれば筋力と持久力が十分にあると判断してもよいかもしれません。

 

 6分間歩行で分かることとしては、FR型での活動が可能な状態で終了となりますので、筋持久力という一点のみの話でいえば不十分かもしれません。だから最大速度で常に運動単位を最大動員した動作で実施して、基準を距離にしているのかもしれませんね。

 

 ここで、最初に言ったMMT3レベルより余力を持った方がいいという話に戻ります。

 

 日常生活場面を想定すると2分で終わらない繰り返し動作もあるかと思います。ですので遂行時間や耐久性という尺度ではMMT3レベルでは実用レベルと言えない場合があるんですね。

 

 つまり日常生活で行う動作速度や方法で歩行であれば10分間継続可能であるのかみるのも一つの方法であると思います。

 

 なかなか臨床で10分間連続歩行するというのは時間的に厳しいこともあるかとは思いますが・・・。

 

2、効果的な負荷と負荷量はどの程度か

 

 前の記事で説明していますが、高齢者の筋力低下は主に①廃用性筋委縮、②

1次性サルコペニア、③2次性サルコペニアの3つに分けさせてもらいました。

 これによって起こる筋肉と神経の問題としていくつか列挙します。

 

筋衛星細胞数の減少

筋体積の減少

運動単位の動員数の減少

神経筋接合部の代謝低下

 

 この一つ一つの要素に対して対処していかないといけません。それぞれの簡単な説明については前回の記事をご参照くださいね。

 

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ます筋衛星細胞数の減少についてです。

 

 筋衛星細胞は筋修復を行う際に、活性化した筋衛星細胞が分裂と結合を行い筋原組織に最終的になります。つまり筋衛星細胞が減少した状態では筋の修復が遅延する恐れがあることやリモデリングの際に分解優位な状態になってしまうことが推測されます。

 

 筋衛星細胞は筋収縮によって活性化します。負荷量ということではなく筋へ収縮という刺激を与えることが重要なポイントです。

 

 研究では抗重力伸展活動を行うことで筋衛星細胞数の増加を確認したという報告もあります。つまり部分的な運動を行うのではなく全身運動を行うことで全身の筋肉に収縮刺激を加えて筋衛星細胞を活性化することが重要になります。

 

 2つ目に筋体積の減少についてです。

 

 筋核数減少と筋線維数の減少を伴うの線維化が原因ですので、筋肥大を伴う動作が必要になります。よく言われていることとして60%負荷量で素早い運動を実施するとよいと言われます。

 

 原理としては、まず筋の損傷についてですが、筋に適度な負荷を加えると筋のZ帯が歪みを起こします。このZ帯の歪みが筋を微細に割き、損傷を引き起こすわけです。そしてZ帯修復の際に、さらに筋線維を太くして修復したり、Z帯が分裂したりすることで筋核数と筋線維数の増加を伴う筋肥大が生じることになります。

 

ではここでまたポイントになります。

 

 最大筋力の60%負荷量ですが、その人の最大筋力の60%ということです。

 

 例えばリハビリを行っている対象者がギリギリ立てるかどうかレベルである場合は立位練習は最大筋力に近い負荷量になります。数値にするとMMT3レベルで健常高齢者の30%ほどの筋力だとすると

 

 30%×60%となるため、20%(MMT3)=負荷なしで重力自重のみで素早く運動するレベルでもちょうどいいということです。

 

 もし可能であるのであれば他の部位に問題があるのかもしれませんね。その場合は、評価をもう一回いってみようとなっちゃいますね(笑)

 

トップダウンの評価については、こちらをヒントになればと思います。

 

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3つ目に運動単位数の減少と同期化についてです。

 

 運動単位数の増加に必要な要素としては最大収縮か素早い運動を行うことがポイントになるます。

 イメージできるのではないかと思いますが、最大収縮を行うことでS型からFF型まで同期しないといけないことや素早い運動は瞬発系を動員しないといけないという点からFF型を強制的に動員することになります。

 

4つ目の神経筋の代謝促進

 

 有酸素系の運動が友好的とされています。または数分間~数十分間の低から中等度の強度の運動は神経筋接合部の代謝を促進することが分かっていることやミトコンドリアの活性化が行えるため代謝効率を上げることができます。

 

3、効果的な運動や優先順位

 

 重要なことは現状の高齢者の身体特性を知ること

 背景要因と現在の筋力をMMTでどのレベルかを想定したリハビリプログラムの立案と強度の設定を行うことですね。

 

例えば、歩行困難症例

 

 立つのがギリギリ、歩行困難であれば、その人にとっては最大筋力でMMT2レベル、立てているという事実から健常高齢者の20%以下ではあるけども限りなくMMT3レベルに近い2レベルと判断できます。

 

 さらに臥床傾向が背景にあるとすればその日数毎日3%ぐらいづつ筋力低下していると考えます。また肥満はあるのか、糖尿病の既往歴は・・・。

 

 臥床傾向が続いているのであれば、運動は全身運動で筋衛星細胞の賦活を図るべきか。詳細な評価の上での問題点に絞って筋力トレーニングを行うべきかなど考えます。

 

 肥満や糖尿病によるインスリン抵抗性や慢性炎症の影響を考慮するのであれば有酸素系の運動を取り入れるべきか。

 

 MMT3レベルの負荷量で行きたいが、2次性のサルコペニアを負荷量を上げることで引き起こすのリスクはあるのか。具体的には栄養状態の確認。

 

 このように筋力低下の要因と対処、リスク管理を行いながらリハビリ内容と負荷量を決めていくといいのかと思います。そして最終的に優先順位を決めてリハビリを実施していくことになりますね。

 

4、ちょこっと感想

 

 いろいろ長く説明をしてきましたが、いろいろ考えた上で結局他のスタッフとあまり変わらない練習内容になることもあります。しかし別に奇抜なことをする必要はないのです。

 もし何も考えずに考えられた他のスタッフと練習内容が一緒だったとしてもリハビリ効果という面において、揺るぎない専門的視点からくる大きな効果の隔たりが生まれます。つまり似たようなリハビリ内容の構成であったとしても患者を診る視点が大きく違います。

 

この違いが患者に与える効果を大きく変化させる1つの要因ではないかと思っています

 

 患者から「なんかあの先生にやってもらうと良くなる」とか「あの先生がやってくれると調子がいい」とか言ってもらえるセラピストになりたいですね。

 

 患者様はよく人をみています。誠実にそしてしっかりと考えを持ってリハビリしてくれるセラピストのことは信頼し、その信頼がさらに良好な治療効果を生み出すのだと思います。

 

 そう言ってもらえるようなセラピストに一緒になれるように頑張って研鑽していきましょう。

 長々とありがとうございました。皆さんの明日の臨床の何かヒントになればと思います。それではまた何か気づいたことや疑問に思ったことがあったら調べてその結果を報告させて頂こうと思いますので、よろしくお願いします。

高齢者の筋力低下の原因について考える

 なぜ人は年を重ねると筋力低下するのでしょうか?

 今まで普通に生活していた方が1週間寝たきりになってしまっただけで、著明にADL動作に支障をきたすまで筋力低下してしまうのか?

 

 ふと気になりました。気になったので少し原因について調べて考えてみました。今回は、僕なりに調べた高齢者の筋力低下となぜADL動作にすぐ影響するほど弱るのかについて考察していきたいと思います。

 

高齢者の筋力低下の原因

廃用性筋委縮

1次性サルコペニア

2次性サルコペニア

 

 主に高齢者はこの3つで筋力低下を起こしてしまうことが明らかになっています。まずは、この3つについて順番に確認していきましょう。

 

1、廃用性筋委縮

 

 廃用性筋委縮とは、長期間の不動により筋体積が減少すること。筋核数の減少と線維化が生じることをいいます。

 

 まず筋合成についてですが、筋は衛星細胞という細胞が分裂・結合をして筋肝細胞になり、その後筋原細胞になり筋の修復を行います。

 

 長期間の不動は、筋衛星細胞が活性化されるタイミングがありません。人の身体は、必要としない機能は衰退していきます。つまり筋衛星細胞数が減少します。筋肉を作る源がなくなれば筋は合成されないため、筋体積の減少と筋力低下を引き起こします

 

 結果として、筋内に存在する筋核も分解されていく量の方が多いためその数を減らしていきます。筋原細胞がやせ細っていくとその周りの膠原組織が空いた隙間を埋めるように増えていきます。

 

 膠原組織は伸張性が乏しいです。つまり筋肉を構成する組織が伸張性が乏しく、中身のないスカスカな状態になります。これが線維化です。

 

 この状態を見た目上速筋に似ていることから、速筋化といいます。あくまで見た目上の話・・・。こんな筋肉では筋収縮能力が低下するのは想像に難くないですね。

 

 さらに不動1日で筋力は2~4%低下すると言われています。しかし健常者であれば、毎日2%の筋力低下を引き起こしたと仮定して・・・。

 臥床1日目を筋力100だとすると1週間後は88.6%は筋力が保たれているはず・・・

 

 1割弱失ってもADL動作に支障をきたすか疑問ですね。もう少し他の要因も考えていく必要がありますね。

 

2、1次性サルコペニア

 

 1次性サルコペニアとは、簡単に言うと老化することです。つまり原因は分かっておらず、遅らせることができても完全に止めることのできない要因になります。

 

 要因としては①加齢に伴う性ホルモンや成長ホルモンの分泌低下、②運動神経数の減少、③神経筋接合部の変性があります。一つ一つについてさらに詳しくみていきましょう。

 

 まず性ホルモン(特にテストステロン)と成長ホルモンは筋合成を促すホルモンになります。この性ホルモンの分泌が低下することで筋合成と筋分解のバランス(筋のリモデリング)が崩れてしまい分解が優位となってしまうため筋体積の減少につながってしまうということになります。

 

 2つ目に運動神経数の減少についてです。これは速筋線維、さらに言うと中枢筋の速筋線維の支配神経が減少します。

 

 さらに支配する神経を失った筋線維は遅筋系の神経が支配するよういつなぎ変わります。遅筋系の神経は神経伝達速度が遅く、収縮力の弱い刺激を伝達する神経です。この現象によって速筋系は本来の能力を発揮できなくなり、萎縮していきます。これにより最大筋力は低下します。

 

 筋発揮についてどうして遅筋の神経では速筋の本来の筋発揮が困難になるのか疑問が出てきますね?

 

 その問いについては、サイズの法則と言うのがありますね。これで説明します。

 

 一番閾値が低いのが遅筋、その次に速筋系になります。細かくは速筋系を3つに分けることができますが、そこは割愛(笑)。

 

 筋発揮は必要な筋力に応じて筋発揮を強くしたり、弱くしたりできますね。

 

 例えば肘の屈曲を行ってティッシュペーパーを持ち上げるときの上腕二頭筋の必要な筋力と2ℓの飲料ボトルを持ち上げるときの上腕二頭筋の必要な筋力は大きく異なりますが、サイズの法則で筋活動させる筋の運動単位数をコントロールしますね。

 

 これを生理学的に考えるとティッシュペーパーを持ち上げるときは遅筋系のみを活動させて動作を実施しているのに対し、2ℓの飲料ボトルを持ち上げるときは速筋系の筋まで活動させています。

 

 これは伝達するパルスの頻度と速さで決まります。1つの電位が伝わることを単縮といいますが、これが頻回に送られると大きな電位として筋に伝えられる強縮が生じます。

 このでっかくなった電位で速筋系の筋が閾値を超えた際に筋収縮が生じます。遅筋系の神経は閾値が低いので頻度が少ないんですね。だから速筋系はなかなか筋収縮を起こすことができなくなります。だから速筋系は萎縮します。

 

 さらに神経筋接合部の変性についてです。

 神経と筋の間にはシナプスを形成していますね。このシナプスにはシナプス小胞というCaイオンを中に収納している小胞があります。神経軸索内にあるシナプス小胞がアクティブゾーンと言われる場所に運ばれてシナプス間隙にCaイオンを放出します。

 

 このアクティブゾーンにシナプス小胞を運ぶたんぱく質が変性し、シナプス小胞とくっつきづらくなることやそもそも数が減ってしまうことで上手くアクティブゾーンにシナプス小胞を運ぶことができないため筋のシナプスで脱分極が起きなくなるんですね。

 

 つまり速筋の割合が減少し、遅筋の割合が増えるといってもいいでしょう。厳密には違いますが・・・(遅筋よりも持久力のないが、速筋よりも瞬発力に欠け、最大筋力の低下した中途半端な筋が出来上がる)。さらにそもそも神経と筋の間で神経伝達物質のやりとりもできていない状態になります。

 

 高齢者の歩行場面を見て頂くとお分かりになりますが、ゆっくりと緩慢な動作で歩かれている方が多いと思います。

 

 少し脱線しますが、10m歩行などで歩行速度と転倒リスクをみる検査ではこういう視点で持って評価しているんだなと思ったら考え深いですよね。

 他の要因もあると思いますが、どれくらい筋肉の老化が進んでいるのかすぐに分かりますね。

 

 この1次性サルコペニア(止めることが困難な要因)の影響で日常生活で必要最低限の筋力まで低下を起こしている。なんとなく高齢者の状態が見えてきましたね。

 

3、2次性サルコペニア

 

 次に2次性サルコペニアについてです。原因は栄養不足、内分泌低下、インスリン抵抗性、慢性炎症です。原因が分かっているので防ぐことができます。

 

 要因からも推測できるように肥満な方や2型糖尿病の方は2次性サルコペニアのリスクが高くなります。

 

 慢性炎症やインスリン抵抗性はたんぱく質合成を低下させます。そして慢性炎症は、肥満による炎症性サイトカインの働きで生じます。

 

これらの働きにより高齢者は筋力低下を起こしているわけですね。

 

4、考察

 

 これらの事実から高齢者の筋力低下考察

 

 高齢者は日常生活を送る中で、1次性サルコペニアを引き起こし筋力が知らないうちに低下している。これにより筋は最大筋力低下と瞬発力の低下が生じている。

 

 さらに代謝の低下や運動不足などで肥満傾向になることや持病に糖尿病があるためにたんぱく質合成を妨げ、生活習慣の影響で2次性サルコペニアを引き起こす

 

 そして日常の中で何らかの体調不良で臥床を行ったり(廃用性筋委縮)、ご飯が食べられなくなったり(栄養不足)することで日常生活困難な筋力低下状態に陥る

 

 このような成り立ちで高齢者は、数日から数週間の臥床により日常生活に支障をきたすレベルの筋力低下を生じるのではないかと考えます。

 

5、最後にちょっと感想

 

 少し文章が多く長くなってしまいました。少し深く掘り下げることで高齢者の健康状態目線で寄り添ってリハビリを行えるのではないかなと思います。

 

 しかし逆に長期臥床がリスクであることや栄養状態を気にしないといけないなとか見るべき視点も広がったかな僕はと思います。

 

 また予防医学は大事だと思いました。そもそもギリギリ生活できるレベルから余力をもって生活できているレベルになれれば・・・。

 

 もし体調を崩して床に臥せっても体調が改善した際にはリハビリを受ける必要がない状態で生活を再開できると思います。

 

 リハ栄養について興味が湧いたので今後調べてまとめてみようと思います。興味があればみてください。

 

 これからもリハビリを効果的に行っていくために基礎医学に基づく根拠をもとにして説明できる専門性を磨いていきたいと思います。

 

 最後まで見て頂いてありがとうございました。今後もいろんな気になったことを探求して自分なりの答えを出していこうと思いますので、よろしくお願いします。

理学療法評価と治療、トップダウンで考えるには。

 

 今回は前にオンラインの勉強会に参加する機会がありました。その時に教わったことを自分なりに解釈して皆さんに紹介したいと思います。

 

はじめに

 われわれは臨床経験が長くなるにつれて評価をすっ飛ばしていきなり治療介入を行ってしまうことがあります。治療を行う上で重要なことはもちろん改善が得られることです。時々評価しないで治療を行っていても、改善が得られることはよくあります。しかしその場合は改善出来る症例と改善が得られていない症例が生じてしまう可能性があることや自分の成長につながらないため評価を行う必要がありますよね。

 

 僕はよくあったのですが、実習生を受け持ったときや引き継ぎ業務を行っているときに思うのですが、前に成功した治療にこだわったり、治療対象としている部位が偏っていたりすることに気付くことが多くなります。

 

しかしボトムアップで評価し治療では、日々刻々と変わっていく患者様の様態に対応することが困難でるため、トップダウンで評価し治療につなげることが必要になります。

 

トップダウンで評価して治療につなげるために必要なものとして

①問診、②動作観察、③理学療法評価、④問題点決定

 

ひとつひとつ確認してみましょう。

 

①問診

 

問診の目的としては、症状が出現した原因を見つけることや既往歴などの確認、症状がでる時間帯など普段の生活の困っていることを聞きます。

 

②動作観察

 

 動作観察を行うときに注目するポイントは、代償と原因の視点で観察を行うことです。そして運動連鎖(原因・代償)やカウンターウエイト(CW・代償)、カウンターアクティビティ(CA・代償)、カウンタームーヴメント(CM・代償)かなと思います。

 

 例えば片脚立位をイメージしてください。前額面から見まして肩峰が最外側、次に骨盤、坐骨の下に踵という風なアライメントになります。骨盤はやや対側傾斜しています。例えば胸郭に硬さがあり、最外側へ移動できないとしましょう。CWとして骨盤が外側に移動したり(お尻が外にで出る姿勢)やCAとして腰背部筋の過緊張を引き起こしたり、CMとして同側股関節が外転して体幹を傾けていたり様々な反応が生じます。

 

理学療法評価

 

 この反応に対して各関節可動域を測ったり、筋力をみたり、感覚を確認したり、筋緊張触診したりして問題点をしぼります。この検査は特殊なものでなくていいと思います。

 

④問題点の決定

 

 この段階で行った検査で問題がなかった場合は、もう一度動作観察に戻ります。問題があった場合のみ治療に移りましょう。

 

 問題点は機能レベルに落とし込む必要があります。つまり何関節可動域制限とか何筋の筋力低下というように断定すること。そのレベルに至らずに腹筋群とか股関節伸展筋とかアバウトな表現になっているうちはまだ問題点をしぼり切れていません。もう一度評価に戻りましょう。

 

治療

 

治療をする場合は、何か所もいっぺんに治療するのではなく、1か所に集中したメニューにすることが最も重要です。

 

 なぜか?それは例え問題点が3つあったとしてもそれらは代償や根本原因、共通した崩れの原因となっているため、1か所の治療が関連した他の2つへ影響を与えます。そして時間的な効率を考えても1単位で治療が完了するレベルを目指していくことで、外来リハ担当になった際も治療を円滑に行うことができるようになるはずです。常に時間的意識を強く持って治療に臨みたいところです。

 

おわりに

 

治療までの道のりで必要なことは

・圧倒的な解剖学的知識(関節・筋・高次脳機能など)

・正常な運動学(運動連鎖・各基本動作)

・絞り込むための正確な理学療法評価

 

 これらの知識を磨いていくことが将来的に選ばれるセラピストになるには必要になるのではないでしょうか?

 

 僕も毎日解剖学の教科書とにらめっこしてますよ(笑)。みなさんも一日5分でもいいので基礎的なものを学んで一緒に選ばれるセラピストになっていきましょう。