brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

トレンデレンブルグ歩行を体幹で治療する

 臨床場面でよく見かけるトレンデレンブルグ歩行についてです。

 

今日のレジュメ

  1. トレンデレンブルグ歩行とは
  2. 股関節外転作用が中殿筋?
  3. 別の視点からトレンデレンブルグ歩行を捉える
  4. 問題点は胸椎部にあり
  5. 胸郭の運動について
  6. 評価で大きく問題点を絞る
  7. 終わりに

 

トレンデレンブルグ歩行とは

 皆さん知っていると思いますが、トレンデレンブルグ歩行とは歩行時の支持脚と逆側に骨盤が傾斜することです。そして支持側と同側へ骨盤が傾斜するのが逆トレンデレンブルグ歩行といいます。そのトレンデレンブルグに体幹の立ち直りが出現するとトレンデレンブルグ-デュシェンヌ歩行といいますね。

 

 一般的に中殿筋の筋力低下と言われ、中殿筋の筋力トレーニングとタンデム歩行(継ぎ足歩行)を行います。しかし多くの場合、「なんかよくなんないな。」と感じることもあるのではないでしょうか。

 

 今回はこの「よくなんないな。」に対して様々な要因がある中、体幹に着目し解説していこうと思います。

 

股関節外転作用が中殿筋?

 

 中殿筋なんですが腸骨稜のやや前方と外側、後面に起始し、大転子の上部に付着しています。解剖学上立脚期の作用としては、臼蓋に大腿骨頭を押し付ける作用があります。肩甲上腕関節でいうところの棘上筋にあたります。外転要素はあれど、どちらかというと安定性に関与していますね。小殿筋も似たような作用ですがより後方へついていますのでやや伸展要素が強いのではないでしょうか(小殿筋については調べてないので聞き流してください。)

 

別の視点からトレンデレンブルグ歩行を捉える

 

 まず下肢で骨盤の質量を支えています。そして骨盤は体幹の質量を支えています。ですので骨盤の反対側への傾斜を骨盤に着目し治療を実施することが間違っているとは言いません。

 

 しかし体幹の質量を支えているのは骨盤になるわけで、片脚立位時に効率的に骨盤に質量中心をもっていかないと必要以上に筋力が必要になり、下手をすると支えられない可能性があります。その場合は骨盤が浮いている足の方へ傾斜してしまうというわけです(体幹の問題で支持脚と反対に骨盤傾斜が出現)。

 

この時に中殿筋の筋力トレーニングを行っても予後が不良なわけですね。

 

 もう一つ骨盤傾斜を改善させない原因があります。それは骨盤へ体幹の質量重心を移動できていない状態で頑張って同側の脊柱起立筋や広背筋、腰方形筋などの過緊張を生じると単関節筋の筋活動が抑制されます。この抑制により分節的な運動困難になりふらつきは大きくなります。さらに対側の体幹伸展筋も抑制されて本来支持性を必要とする筋群の活動は生じなくなります。これにより正常とはことなる筋活動による姿勢制御を学習します。

 

 また体幹の質量中心の移動不良からの同側筋の過緊張は腰部へのストレス増大につながることからストレスに対し無意識的に筋に抑制をかけている可能性もあります。

 

問題点は胸椎部にあり

 

 上記で記載したとおり、骨盤に対し体幹の質量中心の側方移動が低下したことによるトレンデレンブルグ歩行の出現が存在するわけですね。

 

 そして側方への体幹の質量移動は、各脊椎の側屈関節可動域からも分かる通り主に胸椎部で行われます。そして胸郭には肋骨が付着しており、胸郭の運動が深く関わってきます。側方への体重移動を行うには脊柱の運動と胸郭の運動を合わせて考える必要があります。

 

胸郭の運動について

 胸郭は3つの部位に分けて考えます。分け方としては上位胸郭(第1~7肋骨)、下位胸郭(第8~10肋骨)、浮遊肋(第11、12肋骨)です。さらに胸郭の運動は3パターン存在します。

 

  1. 全ての肋骨が前方回旋と後方回旋を行う体幹の屈曲伸展運動
  2. 左右で相反する肋骨の前方回旋と後方回旋が生じる体幹の回旋運動
  3. 側方への体幹の偏位が生じる上位肋骨と下位肋骨で相反、さらに一側の上位肋骨と下位肋骨で相反する体幹の対角線の運動

 

この3番目の運動が側方への体幹の質量中心の移動には必要になります。

 

評価で大きく問題点を絞る

 評価はそんなに難しくないです。しかし症例検討レベルで評価が必要な時は不十分と言われてしまうので、あくまで臨床場面ということでご容赦ください(笑)。では評価のポイントになります。

 

評価は座位で行いましょう。

体幹の可動性を体幹の側屈と回旋、骨盤の各前後傾で評価

体幹の筋力は側方と前方リーチを用いた左右体重移動で評価

 

それぞれのポイントについてです。

 まず体幹の可動性ですが、回旋と側屈と書いたのは、脊柱の運動として側屈と回旋はセットで起こるからです。動作指示としては体幹の回旋がいいと思います。見たいのは、抗重力位での体幹の可動性になりますので重心位置が関節から遠ざかると姿勢保持のために不要な筋緊張を出現させてしまうので、重心位置の移動の少ない回旋がいいかと思います。屈伸に関しても理由は同様です。しかし脊椎ひとつひとつの崩れをみたいときは屈伸運動が有効な場合もあるのでケースバイケースになります。今回は割愛させていただきます。

 

 次に体幹のリーチ動作での左右の体重移動についてです。なぜリーチ動作を用いるのかということなんですが、もしリーチ動作を用いないで体重の側方偏位を指示したとしましょう。この場合は床面で骨盤が固定されて上部体幹が運動するわけですから、運動様式としてはOKC(開放性運動連鎖)になります。しかし上肢を肩の高さで固定しその高さを保持したまま運動するとなると肩の位置が固定部になるため体幹の運動はCKC(閉鎖性運動連鎖)となるわけですね。

 

 しかしトレンデレンブルグ歩行を行う方や高齢者は脊柱のアライメントが崩れており、上肢の屈曲や外転が90°できないことも多いので、その場合は肩の高さが変化しないように注意しつつ、臀部の圧が左右に偏るように指示する方が体幹の筋緊張を高めることなく動作可能なことも多いので参考にしてみてください。

 

 この2つを行う上でのポイントは足部を接地しないこと(上行性の運動連鎖を防ぐため)と臀部で左右の体重移動を行う場合はゆっくりと動作を行うこと。そして移動範囲は胸骨が坐骨まで移動できることです。これがもしできているのであれば、体幹の要素はひとまず置いといて骨盤から下の部位に目を向けてみるといいかもしてないです

。これはこれで治療対象を絞れているのでいいのかなと思います(イッツ!ポジティブシンキング(笑))

 

終わりに

最後まで見て頂きありがとうございました。

 この二つを通して可動性と筋力を大まかに評価して頂き、トレンデレンブルグ歩行時にどれぐらい影響しているか判断してください。

 

 今日は久しぶりに長々と解説を行ってみました。今後も臨床を行っていて気づいたことや効果的であったことがあれば共有していきたいと考えております。

 

 このように牛歩の如くゆっくりながらも成長していければと思っていますので今後ともよろしくお願いします。