brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

腰の痛みにはハムストリングスのストレッチが有効

 こんにちは脳筋王です。今日は腰痛について改善がみられた症例について紹介したいと思います。痛みを改善させることは結構難しかったり、治ってもまたすぐに痛みを訴えたりとリハビリをする上で苦手意識があったりします。

 

 腰部が痛みを訴える患者様に腰部の筋をストレッチしても効果が薄かった時に次ぎ何をしようかと迷うこともあるのではないかと思います。

 

 そんな腰椎に対して今回は、ハムストリングスのストレッチを行うことで腰痛がすっきりと治り、さらに歩行バランスの改善までも図れた症例があったのでここに紹介したと思います。

 

目次

  1. 症例紹介
  2. 痛みの原因
  3. リハビリ内容
  4. 痛みを改善することで得られた副次効果
  5. 今日のまとめ

症例紹介

80歳代で廃用症候群で入院されている方です。

腰痛を認知機能低下によりいつから痛みを生じていたかは分かりませんが、右PSISに局所的な痛みを生じていました。座位や立ち上がり、歩行で痛みを生じるとのことです。

立位バランスでは、片脚立位では右下肢支持側の時に骨盤後傾し外側へ崩れを生じます。左下肢支持側時は左下肢への体重移動が減少しすぐに右足をついてしまいます。

 

姿勢と動作を見てみましょう。

座位姿勢と立位姿勢でも円背を呈しており、骨盤後傾しています。

体幹の回旋の自動運動では痛みは生じませんが左回旋が右回旋と比べて低下しています。

歩行では、右立脚期で骨盤の外側偏位が著明に見られ、体幹が右前方に崩れます。左下肢の荷重量は減少し右前側に加速します。加速することで右側へ転倒リスクを伴っていました。

 

痛みの原因

 腰痛を引き起こす原因は様々です。今回はその中で仙結節靭帯に着目しました。仙結節靭帯とは仙骨から坐骨結節に付く靭帯です。そのままですが(笑)そしてこの靭帯は、胸腰筋膜、多裂筋と大殿筋、ハムストリングスに筋膜で結合しています。

 この靭帯は骨盤後傾位で伸張されます。伸張され続けることで痛みを出現します。つまり今回の症例のように円背姿勢で常に骨盤後傾位で座位保持することで痛みにつながります。

 

注意するポイントとして、円背は改善しない場合は今後も腰痛のリスクを生じますので

、痛みの改善と自己管理できるようになることが目標になりますね。

 

リハビリ内容

  1. ハムストリングスのストレッチ
  2. 体幹の回旋
  3. 立位バランス練習
  4. 歩行練習

これを1単位で行います。時間のある時は40分やりますが、だいたい20分です。

時間の割合としては、ストレッチ3分、体幹の回旋2分、立位バランス3分、歩行練習5分で合計18分くらいですね。あとは挨拶やらお話しやらで時間使っちゃいます。

 

歩行練習と立位バランス練習(片脚立位)は別に何か特別なことを行っているわけではないため省略します。

 

ストレッチ方法

座位で膝関節軽度屈曲位にて足部を触るように前屈していきます。軽度屈曲位で行うことは身体が硬い方はそもそも長坐位で座ることが困難であることや骨盤部と股関節部の動きを行いやすいので便利ですよ。座位なので安全に行えます。安全な動作方法の指導は、今後再発の可能性に対して自主練習として行うことができるようにすることも考えて、なるべく自力でできるものを選ぶといいと思います。手でストレッチをしてもいいですし、SLRも有効かと思いますが、自力で行うことが難しいので今回は前屈を選択してみました。

 

体幹の回旋について

 体幹の回旋は評価と骨盤内運動を行うことが目的です。骨盤内運動とは、仙腸関節での捻じれのことです。例えば体幹の右回旋で考えていきましょう。右に回旋するときは、右の寛骨は仙骨に対して後方回旋(後傾)します。逆に左寛骨は仙骨に対して前方回旋(前傾)します。

 ハムストリングス体幹の坐骨を足部に向けて引っ張りますので寛骨を後傾方向に引っ張ります。つまり後方回旋ですね。先ほどの体幹の回旋を行う際に左回旋を行う時に右寛骨が仙骨に対して前方回旋しないといけませんが、ハムズトリングスが筋緊張亢進している場合は邪魔しますので結果的に体幹の左回旋の可動域が低下します

 SLRで評価してもいいですが、体幹の回旋で評価することには理由があります。1つ目が他の要素を消去するためです。大殿筋や胸腰筋膜の場合は骨盤から体幹に走行するときはクロスします。右の大殿筋や胸腰筋膜は左体幹に走行しますので体幹の同側回旋を行った際に可動域制限を引き起こします。今回は反対側の回旋ですので問題点から除外できますね。多裂筋の場合は骨盤の前傾を行う筋ですので対側回旋の可動域制限は生じません。今回は左右差がありますので除外できますね。起こるのは対側回旋で可動域制限を引き起こしておりますのでハムストリングスが原因と絞れるわけですね。繰り返しになりますが、SLRではなく体幹回旋で評価することで問題点を絞ることができます。

 こんなにうまくいくことも珍しいですが、ラッキーってことで、自信をもってリハビリしていきましょう。

 

痛みを改善することであられた副次効果

 だいたい予測できるかと思いますが、骨盤の可動性が改善したため、片脚立位の非対称性の改善とハムストリングスの筋発揮も改善されたため抗重力伸展活動にて十分な姿勢保持能力を発揮できるように結果、バランス能力の改善されました。立位バランスの改善や体幹の非対称性の改善から歩行時のふらつきもなくなりました

 

 今回の症例では実施していませんが、座位時間が長くなる場合は座面の高くなる椅子を勧めるのも腰痛管理のために有効だと思います。理由としては、骨盤が下肢よりも高くなることで足部荷重を行うと骨盤が前傾位に自然に誘導されるため疼痛が出現しにくくなります。是非行ってみてください。

 

最後に今日のまとめです。

  1. 円背患者様にはハムストリングスのストレッチが有効である。
  2. 円背を改善できない場合は、自己管理の獲得が目標になる。
  3. 腰痛の原因は、仙結節靭帯の過伸張ストレスである。
  4. 体幹の回旋は仙結節靭帯由来の痛みに関わりが深い筋を絞り込むのに便利である。

 

 

 いかがでしたでしょうか。ほんとに腰痛など痛みに悩まされている患者様を担当することがあると思います。今回の内容を参考に皆さんの担当患者様とリハビリを行うあなたの悩みが解決するきっかけになれたら幸いです。それではまた有効だった手技や改善が見込めた症例について紹介していきたいと思いますので興味ある方は確認して生かして頂けたらと思います。それでは、また。