徹底解剖!「多裂筋の解剖学」(リハビリ)
こんにちは、脳筋王です。
今日もまじめにリハビリに役立つ情報を書いていこうと思います。
一日1つ知ることで一週間に7個知る。一か月で30個知る。1年で365個知るそんな風に日々成長していきたいですね。あまり時間を毎日かけられないと思いますので、さくっと毎日皆さんと成長していけたらと思っています。
筋肉について書くのは好きですね。今日は、リハビリを行う中で皆さん大好き多裂筋についてです。
1、解剖
まず起始と停止についてです。
起始:仙骨背面、胸腰筋膜、後仙腸靱帯、腰椎の乳様突起、胸椎の横突起、C4-7の頚椎関節突起
停止:2-4個上の椎骨の棘突起
もう少し詳しく前後のつながりを見てみましょう。
多裂筋はPSISで長後仙腸靭帯と連結しつつ下を通過して、仙結節靭帯と交わります。
長後仙腸靭帯は大殿筋とも連結しています。
つまり、多裂筋→胸腰筋膜(縫線)→PSIS→大殿筋と連結していることになります。
連結している筋は筋緊張の伝達や筋活動の伝達を行っています。
胸腰筋膜の縫線と書きましたが、これは腰部で網目状に線維が交差した部分のことをさします。そしてここで仙腸関節の関節包に付着し固定性を作るため重要になります。
よく腰部がとりあげられますが、頚部から腰部までありますので注意してください。
多裂筋は深層筋の脊柱起立筋の一つです。
腰部の話が多いのは抗重力伸展活動で重要になることや表層に出てきますので触診がしやすいからだと思われます。
次に神経についてです。
背側仙骨神経叢の内側線維支配です。さらにこの枝分かれした皮神経(S2・S3)が大殿筋の下縁を通過します。外側は長後仙腸靭帯の表層を通過します。
これが絞扼されると殿部内側と下部に異常感覚が出現します。
脊柱起立筋は筋線維の厚みで脊柱後方を支えています。
脊柱起立筋の深層筋の中で断面積1/3を占めるためボリュームがとても大事です。
しかし急性・慢性腰痛のある方は。この多裂筋が優先的に萎縮(全体の30%)を起こしてしまうことが明らかになっています。
ボリュームが必要な筋のボリュームがなくなると脊柱との間に隙間ができます。隙間が空いた場合はグラグラになり支えを失います。
しかし多裂筋は筋内に脂肪が浸潤しやすいことも報告されています。
筋線維内が見かけ上はボリュームが保たれているようにみえますが、実際は半分以上が脂肪に置き換わっていたなんてこともよくあります。
つまり、ボリュームを失いグラグラになるか、脂肪が浸潤しブニョブニョの状態で脊柱がグラグラになるかという変化が起こりやすいです。
2、作用
作用:両側収縮では腰部伸展
片側収縮では同側伸展と側屈・対側回旋
多裂筋の臨床でのポイントとしては、腰部前弯と骨盤前傾に必須の筋です。
下部体幹の安定性(様々な動揺に対して)には、腹横筋と内腹斜筋と選択的に共同して働くことが大事です。
ちなみに割合的に多裂筋はタイプⅠ線維が多いです。
収縮は、分節的なコントロールが重要です。
3、臨床的応用
まず評価方法です。
下肢自動伸展挙上(ASLR)テストが有名です。
検査方法としては臥位で膝関節伸展位で下肢を挙上してもらいます。
その時に徒手的に圧迫を加えて下肢の挙上時の努力性や安定性を確認します。
①ASISレベルで骨盤前方を圧迫 → 腹横筋と内腹斜筋
②PSISレベルで骨盤後方を圧迫 → 多裂筋と胸腰筋膜
④恥骨結合レベルで骨盤前方を圧迫 → 腹横筋と内腹斜筋、骨盤底前方筋膜
⑤坐骨結節レベルで骨盤後方を圧迫 → 後方骨盤底
⑥斜めに先ほどのレベルの組み合わせで圧迫 → それぞれの左右の筋・筋膜
⑦腹直筋の外側縁を圧迫 → 腹部深層筋に対するアンカー作用
触診部位について
PSIS部の脊柱棘突起に触れる。
多裂筋の収縮の誘導操作声掛け
「尿をやさしく止める」
「恥骨を肛門に近づけるようにお腹をへこませる」
「PSISを近づけるようにイメージする」
腹横筋と多裂筋は共同して働くように指示を出す。
リハビリは、①選択的な収縮、②他のエクササイズ中やADL動作時も活動を維持という流れが大事です。
また動作レベルに応じて多裂筋と浅層筋(腰方形筋・大腰筋・腹直筋・腹斜筋)と合わせて働く必要があります。
筋力と筋持久力のエクササイズも併用して行ってください。姿勢制御と平衡、姿勢への認識のエクササイズ
筋収縮のタイミングの評価
股関節屈曲課題を実施。
「ポキッ(クリックヒップ)となったら」収縮遅延の疑いがあります。
検査肢位:背臥位、膝屈曲位
検査者の操作:一方の手で腸骨稜に沿ってASISから腰部筋と股関節屈曲筋を触診。
もう一方の手で内転筋触診と軽く股関節屈曲抵抗を加えます。
検査判定:適切な反応は、腰部が一番最初に膨隆
不適切な反応は、過緊張により股関節屈曲筋か内転筋が先に膨隆
加えて腰痛の訴えがある場合は、腰骨盤部の固有感覚(位置覚)の低下、立位バランス低下の原因にもなるので評価とリハビリを行う必要があります。
選択的な収縮のエクササイズとしては、側臥位で骨盤の前傾を伴い脊柱横突起内側部を触診し、頭側へ引き上げるように誘導し収縮を行ってもらう。
先ほど説明したとおり、多裂筋はタイプⅠ線維が多いため収縮の促しは、ゆっくりと低負荷で行っていきましょう。
持続力が大事なので、収縮を理解出来たら持続的に収縮させておくように指示しましょう。
その後再獲得したい動作練習を行いましょう。
4、あとがき
触診や収縮を促すことが難しいです。本人の理解しやすい方法を模索することやじっくり練習を行っていくことが必要なので焦らずにリハビリを行っていきましょう。
あと中々リハビリの効果を実感できないことがあります。痛みのチェックを最初と最後で確認してもらい効果の有無をしっかりフィードバックすることが大事になります。
今回の内容は、こちらの本を参考にしています。
内容としては専門的で難しい内容となっています。
この本の使用方法としては、今回のように一つの筋について調べるような使い方をすると使いやすいかと思います。
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