brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

股関節屈曲内転筋緊張亢進に対する筋膜連鎖と骨盤可動性向上に着目した関節可動域訓練

 

 こんにちは、脳筋王です。

 

 最近また寒さが戻ってきて、外では雪も降っていました。寒い時は無意識的に全身の筋緊張が高くなり、肩や首が張ってきますね。

 

 ということで、今日は臨床で股関節屈筋と内転筋の筋緊張が亢進し、両膝関節がぶつかってしまっている寝たきり患者様の下肢を伸展位にするための方法と解剖学的理論について紹介したいと思います。

 

 5分程度の記事を書こうと思いますので、興味のある方はみていってください。

 

1、筋膜連鎖の基本

 

 まず筋膜は全身を覆っています。

 また関節の運動が起こるときは、図のように上側の筋膜は伸びます。下側は収束していきます。これが重要なポイントになります。

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2、スパイラル・ラインを用いた関節可動域練習

(1)スパイラル・ラインとは

 スパイラルラインとは、いくつかある筋筋膜連鎖の中で体幹の回旋要素をもっている筋膜の流れをスパイラルラインといいます。

 

 筋膜の流れとしては、胸鎖乳突筋→菱形筋→体幹反対側→前鋸筋→外腹斜筋→内腹斜筋→大腿筋膜張筋へ流れていきます。

 

 この中で今回注目するところは、腹斜筋から大腿筋膜張筋への流れのところです。

 

 両側のスパイラルラインの収縮が生じると恥骨結合の圧縮力が高まり恥骨結合を中心に筋膜が短縮していきます。

 

 恥骨結合のところに下肢が引き寄せられていくことで股関節は、屈曲内転位になります。

 

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 反対側も同じ流れで、恥骨結合の上ぐらいでクロスします。

 

(2)大腿筋膜張筋と腸脛靭帯の滑走

 

 これに大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の滑走性が低下します。イメージが難しいかもしれませんが、最初の図をご覧になってイメージしてください。

 

 大腿骨外側面を走行している大腿筋膜張筋・腸脛靭帯と大腿外側面を包む筋膜は、股関節の伸展外転方向へ他動運動を行う際に外側と後方に収束方向の滑走する必要があります。

 

 イメージしやすいように分解して考えてみましょう。

 

 股関節伸展の際には、大腿前面の筋・筋膜は伸張されて、大腿後面の筋・筋膜は収束されていきます。

 

 同じく股関節外転の際には、大腿骨外側面の筋・筋膜は収束する方向へ滑走し、大腿骨の内側面の筋は伸張されていきます。

 

 このようにして先ほど述べた滑走が必要になるということです。拮抗筋は引き伸ばされていくので関節可動域制限と結びつけやすいと思いますが、主動作筋側の滑走性も重要になります。

 

 さらに、大腿筋膜張筋は腸脛靭帯になり、遠位端で脛骨に付着するに関節筋になります。

 

 股関節伸展可動域練習を行う際は、膝関節の伸展を伴って股関節の伸展と外転の可動域練習を行うのではないかと思います。

 

 先ほどの話と合わせて、膝関節の伸展を行うには、腸脛靭帯が膝関節前面から後面に向かって最大で5mm程度滑走する必要があります。

 

 以上のことから腸脛靭帯は、滑走方向としては大腿骨の長軸方向と短軸方向の両方の滑走が必要であるということも合わせて覚えておくと便利です。

 

3、リハビリ方法

 

 ここからは、個人的な意見・方法の説明になります。

 

 手技1:恥骨結合を外側へ引き離すように圧迫します。

 

 感覚として腹部の筋緊張が低下し、下肢が外転方向に開排していきます。

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 開排してきたら、外腹斜筋と片方の手を大腿筋膜張筋に移動し、滑走性を末梢に向かって(収束方向へ)を出していきます。

 

 すると外旋方向にさらに下肢が開排していきます。

 

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 最後に最大可動域まで外転していきます。

 

 その後は、粗大伸展を行いましょう。

 

 いくつかポイントがあります。

(1)一方向ずつストレッチを行うこと

 

 寝たきり患者様の下肢は屈曲内転の複合した方向への筋緊張亢進や拘縮を伴っていることが多いですが、要因も複合的なものになっています。

 

 先ほど説明したことやそのほかの要因によって引き起こされています。イメージとしては一つ一つの要素を解消していく感じになります。

 

 個人的には股関節の内転→屈曲の順に行った方が効果的な印象があります。

 

(2)ゆっくりと丁寧なストレッチ

 

 手指や手のひらでじんわりと筋や筋膜を押圧していきます。筋と筋膜に自分の手指や手のひらをなじませて一体化する感じです。

 

 なぜそうするかといいますと、リラクセーション効果と防御性収縮の抑制、姿勢反射を出さないこと、褥瘡のリスク軽減のためです。

 

 ちなみに、ストレッチや筋の伸張は指や手のひらで押圧することで筋肉がたわむことで伸張させることができるため、無理な関節運動を行う必要はありません。

 

 しかし可動域が拡大したか確かめるときや関節包内運動のためであったり、関節包の短縮軽減のためであったりするため最終的には他動運動を行います。

 

(3)筋の深さを考えて圧迫する強さを変えること

 

 今回の場合では腹斜筋や大腿筋膜張筋は表層の筋になるます。表面を軽く押圧する程度でしっかり伸張を行えるため圧迫する圧には気を付けましょう。

 

 また、腹斜筋を行う際には、腹部を圧迫することになりますので、膀胱や腸を圧迫します。不快感とともに尿便意が生じることがありますので、そちらにも注意して下さい。

 

4、あとがき

 

 やり方はいろいろあります。今回もそのいろいろある中で意味のあるものを解剖学や運動学などの医学的に根拠をもつことが大事になると思います。

 

 今後とも僕がリハビリを行う中で効果的だと感じたことを紹介していこうと思いますので、よろしくお願いします。