「膝関節の疼痛について」膝痛評価と対策(リハビリ)
こんにちは、脳筋王です。
今日も日々のリハビリで役立つ情報を一緒に勉強していけたらと思います。今日は膝関節の疼痛の基礎知識についてです。
1、膝関節の疼痛発生要因
疼痛部位としては、膝蓋下脂肪体・膝蓋上嚢・靭帯付着部・関節軟骨・骨・半月板・滑膜があります。
このうち関節軟骨には正常では神経はないが、変形性膝関節症患者では自由神経終末が侵入することがありそれが疼痛を引き起こすことがあります。
半月板も必ずしも痛みは出現しません。
半月板は、前部・体部・後部に分けられ、前後部1/3には神経線維が豊富に含まれ、体部には神経線維が比較して少ないため痛みが生じないことがあります。
次にそれぞれの痛みにについて詳しく確認していきます。
・関節包:炎症による疼痛により滑膜が増殖します。これが疼痛を出現させます。また
変形性膝関節症のリスクファクターになります。
・滑液包・脂肪体:外傷や繰り返し圧力により炎症を起こします。膝蓋下脂肪体は神経
線維が豊富に分布しているため疼痛につながります。
・筋と腱、靭帯:オーバーユースで炎症を起こして、疼痛を引き起こします。
→腸脛靭帯遠位端は大腿骨外側上顆を包み込み、Gerdy結節に付着し
機械的ストレスを受けやすくなります。
・膝関節に関わる神経:腰部神経根・閉鎖神経・大腿神経(伏在神経)
・侵害受容器:侵害受容器性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、機能性疼痛に分けられ
ます。
(a)侵害受容器性疼痛:自由神経終末に機械的・温熱的刺激で疼痛出現。
(b)炎症性疼痛:傷の修復の時にも炎症反応が出現。
(c)神経因性疼痛:中枢神経性と末梢神経性があります。
(d)機能性疼痛:非器質的疼痛。心因性疼痛ともいう。
神経因性疼痛の中で、自発痛を引き起こすものは中枢神経の視床・前頭前野・大脳辺縁系・体性感覚野の影響で疼痛が出現します。
2、膝関節の疼痛の評価
・強度:VAS、NRS
・性質:SF-MPQ
・神経障害性疼痛:SF-MPQ2やpain detect(神経障害性疼痛と侵害受容器性疼痛の識別
にが可能)
・触診、圧痛
・臥位でROM評価と荷重下でのアライメント評価
荷重下で膝関節屈曲→外旋が過度でないか(過度な場合は、他の関節の影響が大きい)
筋短縮の評価(臥位にて股関節と膝関節の複合屈曲)
筋短縮している筋を大まかに動作から評価することができます。触診と組み合わせて評価の精度を高めましょう。
大腿回旋パターン 外旋→大殿筋、深層外旋筋の筋短縮
内旋→中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋の短縮
下腿回旋パターン 外旋→腸脛靭帯、外側ハムストリングスの短縮
内旋→膝窩筋、内側ハムストリングスの短縮
・リハビリの基本方針は、疼痛の軽減と基本動作やADLの獲得です。
膝関節の疼痛は、炎症を伴う場合が多く膝関節の可動域制限を引き起こし、ADL動作の阻害因子になります。
疼痛管理を行いながら可動域を維持し、疼痛軽減ともにADL動作の再獲得を目指していきましょう。
そのために制限因子になるものと原因を知っているととてもリハビリを行っていく中で役立ちます。以下に7つ紹介していきます。
・膝関節可動域制限因子と原因
①疼痛:エンドフィールは無抵抗性
②皮膚の癒着、伸張性低下:TKA術後では著明に出現するため膝蓋周囲の可動性が重要
③関節包の癒着と短縮:不動に伴う関節包の線維化→手術や外傷による関節包の損傷後
の不動は早期から癒着を形成
④筋、腱の短縮と筋膜の癒着:TKAは大腿直筋や膝蓋腱を切断→癒着を形成
⑤筋緊張亢進→痛みやアライメント異常を伴う場合が多く、アライメント異常に対して
のリハビリ介入が重要になります。また特定の運動パターンを極めるこ
とも重要です。
⑥関節包内運動障害:joint playが障害されていることがあります。
⑦腫脹と浮腫:膝蓋上嚢の炎症は、癒着と滑走性の低下につながります。
動作の評価(変形性膝関節症)
・IC~LR
正常では、大殿筋と大腿筋膜張筋、大腿直筋、内側広筋が筋活動増大し、大腿二頭筋は減少します。
変形性膝関節症の患者では、大殿筋の筋活動は減少し、大腿筋膜張筋、大腿直筋、内側広筋、大腿二頭筋の筋活動が増大します。
膝関節周囲筋が共同収縮します。
・LR~MSt
骨盤の安定化が重要。
Lateral thrustが出現。
下腿の概則傾斜は増大、股関節内転運動が減少。
腸脛靭帯が股関節外転筋の筋活動を介して外側支持機構の安定化を図る。
大腿筋膜張筋の筋活動は高い状態で維持。
共同収縮(特に外側)は、大きさと継続時間が大事。
変形性膝関節症の患者は、大腿四頭筋(内側広筋)の遠心性収縮が低下します。
軽度の変形では、アライメント修正を意識したリハビリを実施。
重度の変形背は、筋活動の調整を行い、次に収縮形態の調整を実施。
術後は早期から疼痛とともに膝周囲筋の筋緊張亢進が生じます。この筋緊張亢進は脊髄反射による屈曲反射が出現し、膝関節は屈曲します。
膝関節の持続的な屈曲は、拘縮を引き起こすします。気をつけて管理していきましょう。また歩行獲得を考えるのであれば、9°以上の制限が生じると正常な歩行獲得が困難になりますので注意してください。
3、リハビリのポイント
今日も実際のリハビリで役立つことを最後に紹介したいと思います。
共同収縮を行う場合は、抗重力伸展活動で行うと収縮を誘導できます。
肢位として、片方の一歩前に出します(IC~LR)。そこからMStになるところまでの部分練習を行いましょう。
その時のポイントといては、床を踏む方向をしてします。
一歩前に出した足の踵で床面を踏みます。ICでは大腿直筋の収縮が必要になりますので前方へ向けて床を踏みます。
その後LRからMStにかけて床をまっすぐ下方に踏みます。この状況でも大腿直筋に収縮し、加えて大殿筋の活動も促せます。
触診で収縮を確認しながら行いましょう。
4、あとがき
今日お伝えした手技は特別なものではありません。しかし狙った解剖・運動学知識を持って、選択的に動作の中で収縮を促したときとそうでないときではリハビリ効果が段違いに変わります。
今回のポイントに注意しながら動作練習を行い効果を実感していただけたら幸いです。今後も多く担当するであろう症例などを紹介し基礎知識を皆さんと一緒に勉強していけたらと考えていますのでよろしくお願いします。
また、修正点についてコメントありましたらよろしくお願いします。