適切な杖の選び方。杖の処方とリハビリ
こんにちは、脳筋王です。
最近春が近づいてきたのか朝日が明けるのが速くなってきました。仕事に行くときに外を歩くと、とても日差しが眩しくあたたかな風に背中を押されて気分よく出勤できます(朝が一番元気です(笑))。
さて今回は皆さん最初は選び方に迷ってしまう福祉用具(杖)の選び方についてです。
何となく杖と言えばT字杖を選びたくなってしまいます。しかし適切な補助具を選ぶことで患者様のADL動作能力が向上するだけではなく、本人の意欲に働きかけて、活動量増加を図ることもできます。
すごく大事ですよね。もし自分が病気をして補助具が必要になった時に使いにくいものを紹介されたら動くの億劫になります。ですので、しっかりと選べるようになりたいですね。
福祉用具としての杖
では実際に処方される杖についてです。
今回紹介する杖一覧
①松葉杖
②ロフストランド・クラッチ杖(ロフストランド杖のこと)
①松葉杖
特徴としては左右のバランスをとるときに一番いいものになります。ただお分かりの通り左右の幅が必要になりますので家では使いづらいと思います。さらに骨折した人で使われるイメージを持つと思いますが、これは免荷する力が一番高いものだからです。
片方で使うこともありますね。他にも麻痺の人(あんま使ってんの見たことないけど(笑))とか変形性股関節症(しかし普通このレベルの免荷は手術か車椅子乗るとかしてますね)とかです。
物によってアルミ製や木製があり、木製のやつの方が重いです。
②ロフストランド・クラッチ杖(ロフストランド杖のこと)
肘置きついているやつです。見た通り握力の弱い人でも使えます。一本杖よりも支えがあります。4点杖がこの後出てきますが、屋外歩行が必要な方はこちらを処方する方がいいかもしれません。肘置き(カフ)にはC型とO型があります。これはO型の方が安定性が増します。
この杖は手指の変形などの人でも使えるのでリウマチとか脳性麻痺の人でも使えます。筋力低下でも使えますが、実際に筋力低下で使っている人はあまり見かけないです。
理由としては、筋力低下の場合は廃用症候群が多いからです。廃用症候群の人で活動性の低いです。廃用症候群であるなら車椅子を支給して外に出てもらうことの方がいいかもしれません。
もちろん末梢神経疾患の人や筋原性疾患の方は使うと思います。ただの廃用症候群ならいらないねという話です。
T字杖(これは介護保険対象外)
特徴としては杖がなくても歩ける方が使うものになります。6分の1の荷重免荷力を持っています
杖の使い方
杖の使い方で、なぜその人が杖を使っているのか分かります。
試しに杖をポンっと渡してみてください(脳筋的発想)。本能のままに行動した時が一番必要なものを補おうとするもです。
杖の使い方2パターン
1つ目の使い方が前方に杖を突っ張って姿勢を保持する使い方です。2つ目が杖をスキーのストックのように推進力に使うパターンです。
前方に突っ張っているということは杖を話すと前方倒れてしまう可能性があるということです。ということは重心が今ある位置より後方にあればいいわけですね。
さらに詳しく見ていきます。杖の使う瞬間にも注目します。いわば「杖の相分け」ですね。ポイントは握りこむ瞬間であったり、上腕三頭筋の膨隆や肩甲帯の挙上がどの立脚期に生じているのかを確かめます。
立脚初期に過剰に杖を使用する。
立脚初期にドンっとつくのであれば踵接地の時に衝撃吸収を自分の足だけでは耐えられない(もしくは不安)と思っている場合があります。
次に実際にどの筋が正常に働いていないか判断します。筋の判断は膝の動き方で行います。膝がロッキングするときは、大腿直筋の筋力低下からの過緊張か骨性の支持への変更を疑います。
屈曲した場合は大腿広筋群の遠心性収縮が困難を疑います。
足部がパタンと倒れるようなときは前脛骨筋の遠心性収縮困難ですね。
立脚中期に過剰に杖を使用する。
立脚中期であれば単脚支持の支持性が低下していることも考えられます。さらに杖を斜め前につくのか真横につくのかでも変わってきますね。
斜め前についている場合は、脊柱起立筋・腸腰筋・ハムストリングス・大腿四頭筋・下腿三頭筋のどれかが筋力低下している可能性があります。これは単純に支持性に必要な筋力を補っているか前方への推進力の制御を杖で行っている可能性がありますね。
特に推進力の制御を行っている場合は、脊柱起立筋や腸腰筋、下腿三頭筋を疑います。
これは遠心性に収縮することが困難であり、速度を制御できていないからです。
運動麻痺が加わり、膝のロッキングを伴っている場合
大腿広筋群と下腿三頭筋を疑ってみましょう。
大腿直筋の筋緊張亢進によって大腿広筋群が抑制されてしまい膝のロッキングを起こしてしまいます。
ヒラメ筋の筋緊張亢進では、腓腹筋の筋が抑制されてしまっている可能性が高いです。その場合下腿が後方に引かれてしまうため膝関節がロッキングしてしまいます。
真横についているときは、中殿筋と内転筋を疑いましょう。これは側方への崩れを補っていることを示しています。良い点としては、推進力への対応は良好ということです。
骨盤の下制を伴う場合や体幹の側方への傾斜であったりを伴うことも多いです。
中殿筋だけでは?と思うかもしれませんが中殿筋が遠心性収縮しているときは内転筋は求心性に収縮しています。そして内転筋の収縮は骨盤を側方へ軽度偏位させてバランスをとるように誘導します。
推進力として過剰に使用する。
推進力のために使っているときは立脚後期の問題を疑います。
足部が非常に大事ですね。足部の接地がうまくできていないときは長腓骨筋、うまく蹴れていないようなら腓腹筋を疑いましょう。
膝関節と股関節が気になることもあると思います。しかしもし膝関節や股関節に問題があった場合は立脚初期から中期にすでに問題が生じているはずです。立脚後期で崩れているのであればそれはやはり足部の問題が大きいと僕は思います。
麻痺がある場合は麻痺の分離運動のレベルも考慮に入れましょう。
ながながと書きましたが、杖を最後に最大の疑問が浮かぶかと思います。
もちろん杖無しで評価できるのであればした方がいいかと思います。しかしギリギリ歩ける方や痛みがある方、筋緊張が増加しやすい方、極度に恐怖心がある方などは杖を使ったときに分かることもあるかと思います。
他にも見方はあるかと思いますが今回、臨床を通して分かりやすいなと思いましたので紹介しました。
運動分析や杖の使い方、大まかな杖の特徴を知りたい方は確認してリハビリに臨むといいかと思います。
それではまたの機会に・・・。