brainjack’s diary

解剖学やリハビリなど身体について深く考える。

後方突っ張りによる椅子乗車困難に対する姿勢制御のリハビリ

 今日は、長期間の臥床により姿勢反射障害が生じ、体幹と下肢のは後面筋の筋緊張を亢進(後方突っ張りと表現している)させた症例対してリハビリを実施した結果、車椅子乗車困難な状態から乗車可能に至った症例を経験したので紹介します。

 

こんにちは、脳筋王です。今日は久しぶりに症例紹介をしていこうと思います。

 

 まず今回の症例紹介の前にポイントを挙げます。今回のポイントは、感覚入力と姿勢制御についてです。

今日の目次

  1. 症例紹介
  2. リハビリ結果
  3. リハビリ内容
  4. リハビリの注意点

 紹介する症例についてです。

  1. 臥床時から後方へ突っ張り股関節や膝関節の屈曲ROMエクササイズなどを行うと突っ張りが増強し関節運動が困難。
  2. 車椅子へ移乗する際に座位がとれずにほぼ立位姿勢になる。
  3. 本人の臥床時に関節の痛みや恐怖心も強く、座位になるとさらに筋緊張亢進が増加。
  4. 座位から車椅子へ移乗する際は股関節の屈曲を伴う(膝関節は伸展位)。
  5. 車椅子乗車後は股関節伸展と足部尖足により車椅子からずり落ちそうになる。

このような状態です。皆様ならどのようなリハビリをしますか。因みに廃用症候群の患者様様です。

 

次にリハビリを行った結果です。

  1. 後方の突っ張りは残存もかなり軽減。
  2. 車椅子乗車時股関節は80°程度屈曲、足部底屈位を呈しているがフットプレートへ接地可能。
  3. リハビリ時間内は車椅子上からずり落ち、転倒するリスクは消失。
  4. 痛みの訴えはなし。恐怖感の訴えは継続してみなれる。
  5. リハビリへの意欲が向上し、平行棒をみて「あそこに行かないと・・・。」などの発話が聞かれるようになった。
  6. 筋緊張が改善し、臥床状態でも下肢の屈曲運動を行うことが可能になった。左右股関節80°程度まで、膝関節は90°程度まで可能。

 

 離床を行って1か月程度でこのレベルまで改善できました。今後は定期的な離床機会の獲得と筋緊張のコントロールの改善を目標に進めていきます。今後リハビリとして検討中です。

 

さてでは実際にリハビリで何を行っていったのか紹介したいと思います。

 実際に行ったことは立ち上がり練習です。シンプル・イズ・ザ・ベスト。シンプルなだけに奥が深いですよ。

 

 それでもなんだと思ったかもしれませんね。しかしポイントがあります。今日お伝えしたいことはやり方や目的意識で変わるということです。偉そうに聞こえたらすみません。しかしやり方ひとつで効果が変わるんだなぁとひしひしと僕自身が感じた部分もあり紹介しようと思いました。もうやっているよという方には当たり前かもしれませんが・・・。

 

 実際のやり方というのは、今日のテーマでもある通り足底感覚を入れるということです。この方の立位姿勢は後方重心になってしまいます。ですので立位練習を行うにも後方に突っ張り、股関節は後方へ引けて踵が浮いてきます。

 

 普通の立ち上がり動作のリハビリであれば股関節を伸展位に介助し、その上で足底の接地を促していくのではないかと思います。僕もそうしていました。しかし今回は立位アライメントよりも足底接地にポイントを絞り立ち上がり練習を行っているという点が重要です。

 

 つまり問題点抽出の場面で、#1は後方への重心の偏りです。筋力や関節可動域ではありません。繰り返しになりますが問題点は、認知的な面で後方へ重心が偏位してしまっていることに注目していることになります。

 アライメントが崩れていても許します。手順を順に列挙していきましょう。

 

①ひらがな「く」の字姿勢で立位になります。

 

②足底を前足部から踵までしっかりと接地させます。膝折れすることはありませんが、膝もしっかりと固定し、後方でズボンを摑んでいる手(体幹固定のために回している両手)で足底へ圧迫をかけて荷重入力を増加させます

 

③筋緊張の変化をみて軽減が図れたら膝関節を軽度屈曲させながら股関節を伸展していきます。

 

④これを繰り返して軽度膝関節屈曲位と股関節屈曲位までもっていきます。もちろん足部の可動域制限がありますので股関節は膝関節よりも屈曲を許して言います。

 

⑤軽度股関節膝関節屈曲位の状態から前方への体重移動を誘導します。

 

⑥こんな感じで徐々に前方への荷重感覚を入れていきます。何回か繰り返したら車椅子へ正常な着座シークエンスを意識して座位にします

 

⑦着座後足関節背屈を促すと膝関節の自動運動が出現したのでそのまま膝を屈曲してもらっていき踵を床にくっつけて足部を床面に全接地します。

 

⑧そしてまた立位練習とこの動作を繰り返しました。

リハビリ終了時にフットプレートにゆっくりと本人にも手伝ってもらって足部を接地していくと筋緊張が亢進することなく行うことできました。

 

 1回のリハビリで得られたものではなく、4週間近く続けた結果です。最初は①と②を2~3週間毎日繰り返します。そして⑥を毎回意識して行い、その後⑦と⑧をやりました。そして筋緊張の状態をみてアライメントの修正や前方の体重移動を練習しました。これが3週~4週目です。このように段階分けてリハビリして現在に至ります。

 

リハビリ内容の説明をしていきましょう。

 まず最大のポイントは、立位アライメントをいきなり修正しなかった点だと思っています。

 倉松らの研究でも言われているとおり、長期臥床高齢者は座位における垂直認識がズレが生じてしまうことが分かっております。後方へズレた垂直認識は後方の突っ張り動作などの姿勢反射障害につながります。

 

理由

1つ目は、恐怖心が強いことが動作や言動から伝わってきたこと。

 上記で示した通り、後方への重心位置が偏位しているということは前方へ正中までもっていくと前方へ崩れ層で危ないという認識になります。動作のポイントとしては、臥床や座位では股関節と膝関節がすごい勢いで突っ張るのに立位姿勢になったと途端に股関節が屈曲してくることです。正中まで座位で持っていこうとすると後方に重心を持っていこうとして股関節は伸展します。立位時は後方へ重心を持っていこうとするため股関節は屈曲し、足関節は底屈するわけですね。単に姿勢反射が出ている場合は立位では棒状に突っ張るため一枚の板のようになりますね

 

2つ目が後方突っ張りの助長を防ぐためです。

 「く」から伸展させようとすると抵抗感が強く後方への体重移動を助長させてしまうからです。問題点を後方への認知レベルでの重心の偏りとしてリハビリを開始しているためアライメントよりも足底の感覚入力を優先に考えたことからです。

 

3つ目のポイントは、足底感覚入力とアライメントの修正の前に「姿勢に慣れる」を加えること

 「く」の字立位→なれる→筋緊張軽減→アライメント修正段階づけて行ったこと

高齢者(特に寝たきり高齢者)は、加速度への対応が苦手になります。そこで重要なのが慣れるまで待つという選択です。時間にして20秒程度でしょうか姿勢を保持します。時間は重要ではありません。少しでも介助下で筋緊張の軽減を感じたら姿勢を変化させることです。

 

4つ目が軽度屈曲位で姿勢保持と着座姿勢をしっかり意識して座ってもらうように誘導することです。

 普段の臥床時求心性や完全伸展位での等尺性収縮を行い姿勢保持しているため屈曲位で空間に関節を保持する能力や遠心性収縮など収縮様式のコントロールを促すために意識して行いましょう。座位姿勢も抗重力姿勢になるため遠心性収縮と屈曲位での関節保持能力は大切だと思います。

 

 

 後方へ突っ張りが著明で座れない患者様を担当する際や手立てがなく困ってしまった際に参考にしてみてください。1回の介入では少しの変化しか得られないかもしれませんが、数か月実施すると効果があるかもしれませんよ。

 

 今回の症例の今後の展望としましては、現状少し座位練習可能なレベルになってきたので今後は座位練習を行っていきたいと思います。そして定期的な離床の獲得からADLの拡大と廃用症候群の防止につなげていきたいと思います。

 

参考文献

倉松由子:「長期療養高齢者の在における垂直位の認識について」

末廣健児:「感覚入力・感覚受容とそれに伴う運動の変化について」

筋膜由来の痛みについてまとめ筋膜マニピュレーション基礎

協調中心の偏りによって生じる様々な歪みと歪みに伴う痛みについて

 

 以前まとめた記事の総集編です。細かなところはリンクを貼っておきますのでそちらで確認してください。ではさっそくいってみましょう。

 

目次

  1. 関節運動の方向の歪みから生じる痛み
  2. 放散痛と圧痛のしくみ
  3. ゴルジ腱器官の機能低下からくる痛み
  4. 運動への関わり
  5. ストレッチする部位

 

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/12 21:03時点)
感想(1件)

 こんにちは、脳筋王です。最近僕が勉強していた筋膜の痛みについて、まとめ記事を作成しました。一つ一つを説明を簡略化したものを一つにまとめていますので、少し分かりにくかったり難しかったり、説明が不足している部分も多いかと思います。そういう時は一つ一つの記事を確認し理解を深めてもらえばと思います。

 

 なおストレッチについての項目はストレッチは何のために行うのかということを書いており、手技について解説しているわけではありませんので予めご了承ください。そちらについては今後詳しく解説していく予定となっています。

 

関節運動の方向の歪みから生じる痛みについて

 筋膜内での協調中心の偏りが、正常な協調中心の収束を邪魔します。偏った協調中心からの牽引力は、生理的な関節の運動方向から逸脱した方向へ関節を引っ張ります。異常な方向への牽引量は関節構造体に負荷をかけてしまうため痛みを出現させます。

 

 またこの時に錘内筋線維は伸張されることで筋緊張が亢進した状態になります。錘外筋も筋紡錘の働きによって収縮しますが、錘内筋線維から伝達された収縮信号に必要な錘外筋線維の収縮が得られないとき、錘内筋線維と錘外筋線維にズレが生じてしまうため痛みを出現させます。

 

 関節の運動方向が逸脱した際に無理やり方向を修正しようとして他の筋膜単位の収縮が出現します。この時の過剰な他の筋膜単位の収縮も痛みにつながります。

筋膜単位の話はコチラの記事をご覧ください。

 

brainjack.hatenablog.com

  このようにして運動方向のズレは生じいてそれに起因する痛みを引き起こすことになります。

 この解説についても過去に記事がありますので、合わせてご覧ください。

 

brainjack.hatenablog.com

 

放散痛と圧痛のしくみ

 放散痛とは神経が圧迫された時に患者様が「電気が走るような・・・」とかいう痛みのことです。

 協調中心の偏りは、痛覚の感受性を高めます痛覚の閾値が低下)。協調中心の偏りは、筋自体の弾性も低下します。筋自体の弾性力の低下は、筋に圧迫を加えたときの皮膚から筋膜へ伝わる圧をうまく逃がせません。逃がしきれなかった圧力は自由神経終末に刺激入力が入り痛みを発生します。これが放散痛になります。筋の痛覚の閾値低下と粘弾性低下から神経に圧力が伝わりやすい状態であることから少しの刺激にも放散痛を生じるようになります。閾値が低下は反射的な筋収縮を起こしやすくなり筋緊張が亢進した際も痛みを生じます。

 

 こちらの内容についてはコチラの記事も合わせてご覧ください。

 

brainjack.hatenablog.com

  そして協調中心の偏りの慢性化は、慢性的な変性を生じ慢性的な疼痛を生じさせるようになります。偏りの慢性化=疼痛の慢性化。

 

ゴルジ腱器官の機能低下からくる痛み

 ゴルジ腱器官が正常に機能していない場合も痛みを出現します。ゴルジ腱器官が正常に働かなくなる原因も協調中心の偏りが原因になります。まあ、筋膜マニピュレーションの教科書で勉強を勧めていますので筋膜由来であることは分かってますけどね。重要なことはなぜ筋膜の歪みが生じると痛みにつながるのかということだと思います。そちらを勉強することを主に行っていきます。ここまでの話は記事にしていますので、

 気になるところはコチラを確認してください。

ゴルジ腱器官についてはこちらの記事になります。 

 

brainjack.hatenablog.com

 

 ゴルジ腱器官の機能が正常に機能していないときは、関節の不安定性や運動時の関節の硬さを感じることがあります。この関節の不安定性や硬さもゴルジ腱器官の機能を改善すると痛みと同時に改善がされることがあります。合わせて記事を見ていただける助かります。関連記事は、上の記事になります。お間違えないように・・・。

 

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/12 21:03時点)
感想(1件)

運動時への関わり

 協調中心の偏りは、痛覚の閾値の低下します。この閾値低下によって運動時痛も出現します。

 

運動時の痛みの発生メカニズム

 脳からの指令は筋紡錘へ伝達されます。この時筋紡錘の筋腹部は伸張されます。筋紡錘が伸張されたのち、筋紡錘から錘外筋線維に伝達されます。筋収縮は、深筋膜が関節構造体へ伸張刺激が伝導されます。伸張刺激による総和が痛覚の閾値を超えたときに関節に痛みを感じます。

 

 運動時にも筋紡錘が伸張されることが重要ですね。筋紡錘の末端に近い部分は収縮されますが、中心部(ここでは筋腹部と呼んでいます)末端に引っ張られて伸張されていることで錘外筋線維に収縮命令が発令され、筋活動が生じるわけですね。閾値の低下と運動方向のズレから過剰なストレスが加わり閾値を超えてしまうことで痛みにつながるのです。

 

筋膜の巧緻性への関与

この巧緻性を理解するためにまず筋膜の進化を振り返ってみましょう。最初は筋節という

 筋紡錘もゴルジ腱器官も存在しない筋が独立したものの集合体でした。右に収縮するときは右側にある筋を全てが全力で収縮することしかできませんでした。方向の調整も力加減もできません。全か無かの法則ですね。全力で収縮した後は全力で弛緩します。

 

 そこから筋間中隔が形成され、筋膜単位に分けられました。筋膜単位に分かれたことで運動方向の調整が出来るようになりました。さらに筋は筋周膜に包まれ、筋外膜には筋紡錘が形成されました。さらに細かく筋内膜で包まれそれぞれを運動単位として区分けしました。そのいくつかの筋線維をゴルジ腱器官が巻き付き運動の力加減ができるようになりました

 

もう少し詳しい内容はコチラをご覧ください。

brainjack.hatenablog.com

 

 協調中心が収束できないと力の調節や運動方向のコントロール、巧緻動作ができないため、正常な協調中心の収束(筋紡錘の機能・ゴルジ腱器官の機能が含まれる)が大事になります。

 

ストレッチをする部位

 問題の起点となっている部分が協調中心の歪みです。さらに広く言うと筋膜の滑走性と歪みを改善するためにストレッチを行います。

 

 実際に見た目上ストレッチをする部位は一緒になるかと思います。しかし実習生の時などは筋肉自体を伸張させるため実施していたのではないかと思います。それも悪くないとは思います。実際に筋自体の短縮や廃用症候群の筋というのは筋自体の架橋結合が増加し筋自体の伸張性が低下していることは昔から知られていることですね。

 

 それにプラスして筋膜についても伸張性の改善であったり、協調中心の偏りの改善であったりというところに向けていきたいですね。理由は、筋膜の機能異常が起こると筋紡錘やゴルジ腱器官の異常を通じ痛みを生じることや運動時に不安定感、関節の硬さにつながること、運動のパフォーマンスの低下につながることがあるためです。

 

 そして認知中心となる関節の痛みを要素分解してみると関節構造体に付着している筋膜が刺激の総和で痛み刺激を脳へ伝えています。

 

 患者様の「なぜ痛いか」や「痛くてつらい」という問いに対して「筋肉が・・・。」に加えて「筋膜の・・・。」という身体の全体の問題として話ができると動作観察との結びつきからさらに専門的な運動療法の指導や再発予防というところまで話ができるようになるのではないかと思います。

 

 僕もそういった話ができるように、そしてもっと視野を広げて患者様を評価治療できるようになるために勉強していき、皆様にお伝えしていけたらと思います。

では今日はこれくらいにします。それではまた。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/12 21:03時点)
感想(1件)

 

関節運動時の不安定感の原因とゴルジ腱器官の関係

関節が安定して運動を行うためには、拮抗筋の収縮と抑制をコントロールする必要があります。

 

 少し具体的に言いますと、関節を安定させるには拮抗筋の一部の筋線維を抑制し、他の一部の筋線維は収縮させるということです。この収縮のコントロールは、ゴルジ腱器官の働きが重要になります。

 

 こんにちは脳筋王です。今回はゴルジ腱器官の働きを中心に解説していきます。僕も勉強している中で理解するのに結構時間を要しました。分かりにくかったらすみません。さて、先に保険を掛けましたのでこれで気兼ねなく展開していけそうですね。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/11 06:42時点)
感想(1件)

目次です

  1. ゴルジ腱器官の収縮コントロールの重要性
  2. ゴルジ腱器官の解剖学
  3. ゴルジ腱器官の3つの抑制方法
  4. まとめ
  5. リハビリへの応用

 

ゴルジ腱器官の収縮のコントロールの重要性

 主動作筋が収縮を行う際に拮抗筋の収縮も起こらないと関節に一方向性の圧迫ストレスがかかることになります。これでは関節の適合性が得られません。例えば重いものを持ち上げるときに関節が破壊されないように拮抗筋を収縮させて関節を安定させます。

 

 しかし逆に拮抗筋全ての筋線維が収縮してしまうと関節運動を阻害してしまうため非効率です。そこで拮抗筋の一部の筋線維の収縮と一部の筋線維の抑制が関節運動を阻害しないようにしつつ、加えて関節の安定性を高めることが可能になるわけですね。しかも中枢神経を介さない自動的な末梢の反応というところも一つポイントになります。

 

 この後ゴルジ腱器官の働きについて解説していきますが、解説を始める前に少しゴルジ腱器官の解剖学について確認しておきましょう。

 

 

ゴルジ腱器官の解剖学

 ゴルジ腱器官は、10~20の筋線維にコラーゲン線維が巻き付くように連結しています。ゴルジ腱器官は運動単位ごとに直列に配列しています。筋線維の一つ一つにコラーゲン線維の巻き付き方は違い螺旋を描くように巻き付きます。筋収縮によって螺旋状に巻き付いた線維が牽引されて伸張されます。伸張によりゴルジ腱器官の神経軸索を圧迫します。雑巾を絞るようなイメージですね。圧迫によりゴルジ腱器官は活性化します。

 

f:id:brainjack:20200511201246p:plain

ゴルジ腱器官


 運動単位の進化と形成についてはこちらで確認をお願いします。

 

brainjack.hatenablog.com

 運動とゴルジ腱器官の3つの抑制方法

 

  • 単関節筋の拮抗筋線維の抑制
  • 二関節筋の主動作筋の能動的抑制
  • 二関節筋の拮抗筋線維の受動的抑制

 

この3つの抑制について解説していこうと思います。

 

単関節筋の拮抗筋線維の抑制

主動作筋の収縮に伴って拮抗する単関節筋の直列配置されたゴルジ腱器官の線維を伸張させ活性化。拮抗筋線維が抑制に働く方法です。

 

例として上腕の筋で考えていきましょう。動作としては肘関節の屈曲時の上腕三頭筋の働きについてです。

 まず長頭と短頭に分けて考えます。まず長頭から言いますと、上腕三頭筋の長頭のゴルジ腱器官は垂直に配置されていますので、上腕筋の収縮に対し抑制されません(あくまで直列配置により伸張されて軸索が圧迫されることで活性化するため).しかし上腕三頭筋短頭は上腕の筋間中隔に向けて斜めにゴルジ腱器官が配置されています。上腕筋の収縮は筋間中隔を通じて、上腕三頭筋短頭のゴルジ腱器官を伸張するため上腕三頭筋短頭が抑制されます

 この上腕三頭筋短頭の抑制システムを単関節筋の拮抗筋線維の抑制といいます。

 

拮抗筋と筋間中隔についてはこちらをどうぞ。

 

brainjack.hatenablog.com

 

二関節筋の主動作筋の能動的抑制

 主動作筋の抑制についての話です。主動作筋も角度によって収縮される筋とゴルジ腱器官の働きで抑制される筋があります。

 先ほどゴルジ腱器官の解剖学の話で書きましたが、ゴルジ腱器官は10~20の筋線維に連結しています。そして巻き付き方が一つ一つで違います。これは収縮時の強度によって圧迫される強さが変わります。運動時は運動単位を形成している何百本の筋線維が同時に収縮します。関節運動による関節角度変化は一つの筋の中でも筋の長さを変えます。この筋の長さの違いは運動単位の中でも変わります。関節運動の角度の違いは収縮強度の違いで変わります。この収縮強度の違いから巻き付き方の違う螺旋状に巻き付いたゴルジ腱器官を順々に伸張圧迫して活性化することで主動作筋の筋線維を抑制していきます。

 

f:id:brainjack:20200511202601p:plain

関節の角度と筋の長さの変化

二関節筋の拮抗筋の受動的抑制

 二関節筋の収縮と抑制についてです。先ほど説明した上腕三頭筋の長頭のゴルジ腱器官は垂直に配列されています。この状態では伸張刺激が入らないため抑制されません。しかし関節角度の変化によって垂直配列されたゴルジ腱器官に伸張刺激が入る角度になると伸張されて抑制されます。この角度変化に対応した抑制は先ほどの上腕三頭筋の話で出しましたが、関節を安定性を得るために収縮させる役割があります。垂直配列されているときは筋膜は伸張されて筋紡錘の方に刺激が入力されるため筋収縮を起こすわけですね。

 

 疼痛を訴える患者様は関節の不安定感や関節の硬さを訴えることが多いです、理由としては先ほど説明したとおりですが、ゴルジ腱器官の機能が働かないことで関節の不安定感と拮抗筋が抑制されないことで関節に硬さを感じてしまいます。

 

 よく臨床で筋緊張を正常にすることで、ゴルジ腱器官が正常に機能に回復することで疼痛とともに関節不安性と硬さがい一緒に解消することがあるわけです。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/11 06:42時点)
感想(1件)

まとめ

 

  • 関節を安定させるために拮抗筋の収縮と抑制のコントロールを行うゴルジ腱器官の機能が重要であります。
  • ゴルジ腱器官の抑制方法は3つあります。
  • 1つ目が主動作筋の収縮に対して単関節筋の拮抗筋が抑制されるパターン。
  • 2つ目が主動作筋が収縮強度の違いで主動作筋自体を抑制するパターン。
  • 3つ目が2関節筋の拮抗筋が関節角度によって収縮したり抑制したりするパターン。
  • 疼痛患者様はゴルジ腱器官の機能不全から関節不安定性と関節の硬さの訴えを伴って出現することがあります。
  • 疼痛と関節不安定性と関節の硬さは筋緊張の正常化からゴルジ腱器官の機能改善により全てが一緒に軽減・消失することが可能な場合があります。

 

 

今回はこの辺にしましょうか。難しく分かりにくいところも多いかと思います。何かあればコメントで気軽に聞いてください。答えられる範囲でお答えします。

それではまた。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/11 06:42時点)
感想(1件)

放散痛や運動時痛と筋緊張亢進のつながり

協調中心の偏りが痛覚の閾値の低下と筋の粘弾性の低下を生じさせ、疼痛を引き起こす。さらに筋緊張の亢進も伴います。

 

今日はこのテーマについて解説していきたいと思います。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/10 18:10時点)
感想(1件)

目次です。

  1. 放散痛と筋緊張亢進について
  2. 慢性疼痛
  3. 運動時痛と放散痛、圧痛のつながり
  4. まとめ
  5. リハビリを行う上で応用するには

 

 こんにちは、脳筋王です。最近は筋膜のことを中心に勉強していますが、なかなか細かく分かりにくい言い回しが多くて勉強が進むスピードが遅くて骨が折れますね。

しかし疼痛改善には必要なことと思い頑張っていきたいと思います。

それではさっそく解説していきます。

 

放散痛と筋緊張亢進について

 まず筋肉を押して痛みが出ること(圧痛)があります。肩こりの人はよくわかるのではないでしょうか。圧痛がある部位は筋肉が硬くなっていることが多い(筋緊張亢進)と思います。

 

 これは筋膜内で協調中心が偏った結果、高密度化が生じて感受性が高まります痛覚閾値の低下)。イメージとして、テーブルクロスを摘まみ引っ張った際にできるシワが寄りすぎている状態です。そして協調中心の高密度化した部位は筋の弾性が低下して圧迫した際に圧を逃がすことができなません。そのため逃がしきれなかった圧刺激は自由神経終末に刺激入力として入ります。痛覚閾値の低下と筋の弾性低下から圧痛が生じるということです。

 

閾値の低下は反射的な筋収縮を生じます。

 

因みに自由神経終末は、深部感覚と空間での身体位置覚と運動の認知に関係します。

 

協調中心と認知中心の話についてはこちらの記事をみてください。

 

brainjack.hatenablog.com

 

慢性疼痛について

筋膜レベルでの慢性疼痛を考えると慢性的な協調中心の偏りが変性という形で慢性化し、閾値の低下もあり慢性的に疼痛を引き起こします。慢性化した場合ちょっとした刺激が引き金となり疼痛が出現します。

また疼痛は圧痛だけでなく、運動時痛も協調中心の偏りが原因で痛みを生じます。では、次に筋紡錘が運動にどのように影響しているか流れを解説していきます。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/10 18:10時点)
感想(1件)

運動時痛と放散痛・圧痛のつながり

まず筋紡錘の関与について考えるために運動が出現するまで神経伝達の流れを説明していきます。

①脳から指令発信

②γ繊維遠心性神経を通じて筋紡錘に伝達

③一部の協調中心の収縮と伸張

④協調中心へ収束

⑤環螺旋求心性神経から脊髄に伝達

⑥α運動神経を通じて錘外筋線維に伝達

⑦認知中心に伸張刺激が伝達

⑧ルフィニ求心性神経を通じて脳へ伝達

 

 この流れは網様体脊髄路系で体幹と四肢近位筋で優位に働きます。この時のα運動神経を通じて錘外筋線維を収縮させ、深筋膜が関節構造体へ伸張刺激が伝導されます。そして関節構造体の閾値を超えたときに関節に痛みを感じます。

 

 脳から入力は筋紡錘の協調中心を伸張させます。閾値が低下した協調中心部は刺激入力に対して疼痛として知覚します。これが放散痛となり、協調中心(筋)から認知中心(関節)に痛みが走るというわけですね。

 

まとめ

  1. 協調中心の偏りは、放散痛と筋緊張亢進に繋がります。
  2. 協調中心の偏りは、慢性的な筋膜の変性を引き起こし疼痛が慢性化する。
  3. 体幹・四肢近位筋を中心に筋紡錘を介して協調中心への刺激入力が運動時に放散痛が起こりうる。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/10 18:10時点)
感想(1件)

リハビリを行う上で応用するには

 具体的に手技とはいきませんが、知識としては生かせることが多いと思います。例えば圧痛は安静時の時に痛みを発生しています。そして運動時痛はその名の通り運動時の痛みです。僕は学生時代に安静時痛と夜間痛は炎症反応で、運動時痛は筋の損傷によるものと習いました。しかし今回の内容では安静時の圧痛と運動時痛につながりができました。評価を行っていく上では重要な所見になるのではないでしょうか。

 

 そして慢性時痛については脳が痛くないのに痛いと思って発痛性のあるサイトカインの分泌を促してしまうことが原因と習いました。よって治療には精神的な介入が有効と習ったことがありました。しかし痛みの原因の一部は筋の変性の慢性化だとするのであれば筋に対するアプローチが有効であることになりますね。今後実際の治療アプローチ方法については勉強を進めていき解説していきたいと思います。

 

 今回はこの辺にしましょう。今回の話で分からないことがありましたらお気軽にコメントください。分かる範囲でお答えしていきたいと思います。

痛みを生む関節のズレの原因を解説

 今日のテーマは、「疼痛は、非協調的な活動が正常な関節運動方向から逸脱を生じさせて関節構造体より生じる。」です。

ちょっと難しめに書きましたので何のことか分かりずらいかもしれません。しかし大丈夫です。今回の記事を見ていただければ何のことかわかると思います。是非最後まで見ていってください

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/9 21:19時点)
感想(1件)

 こんにちは、脳筋王です。今日は疼痛が起きる原因の根本的な問題を理解して患者様の疼痛を少しでも軽減して豊かな生活を取り戻してもろう。ということで一緒に学んでいけたらと思います。

 

 疼痛がある患者様はなかなか予後が悪いですよね。入院中に改善したADLが退院した後低下して再入院なんてこともあったり、転倒して再入院なんて経験も多く見られました。こういう自宅での活動性が低下して廃用を引き起こしてしまう症例の一部は疼痛から安静にし過ぎてしまっている方もいますね。

 

 リハビリ中に改善でればまだいいですが、原因が分からずに入院期限で退院ですなんて状況になったら自分の存在意義を疑ってしまいます。僕も日々そういったリハビリの中で津越でも自分の存在意義を示せたらと奮闘しています。

 さて話が長くなりましたが、本題に入っていきたと思います。

 

目次

  1. 認知中心
  2. 関節運動のズレが生じる原因と痛む理由
  3. 筋膜の滑走性は多方向に必要性</li >
  4. 今日の内容の要約
  5. リハビリの応用

 

 

認知中心とは

 痛みを感じ取るのは、関節周囲ですね。ですので認知中心があるのは関節です。しかし関節構造体(靭帯や関節包、骨)事体が痛みを出しているとは限りません。そもそも関節にある骨には軟骨や骨膜が薄いなどの理由からかなり閾値は高いため、よっぽどのことがないと痛みは出ません。そうしないと歩くたびに刺激入力が入って痛くて歩くなんてできませんので。

 しかし関節が破壊されて遊離物が関節内に広がると炎症を起こし痛みを発します。今回はこれについては説明しませんので他の記事にて興味のある方は確認下さい。

 

 今回重要なのは2つあります。1つ目は、関節構造体(靭帯や関節包、骨)は、全て筋膜で連結しているという点です。そして2つ目は、痛みはそれぞれの関節構造体が受け取る疼痛刺激の入力の総和が閾値を超えた際に出現することです。

 

 全ての関節構造体が筋膜によってつながりを持ち、痛みは刺激の総和で決まるということは、筋も同様に筋膜が包み込んでいます。筋収縮が正常でなかった場合も痛みにつながることが分かると思います。

 では次の項目で筋膜から関節の痛みの流れについて説明します。

 

関節運動のズレが生じる原因と痛む理由

 

 そして異常な筋活動は関節が本来求めている関節運動を阻害します。靭帯や関節包は適切な方向に適度に引っ張られると痛みはありません。しかし過剰な牽引力がはたらいた場合や方向がズレた場合に痛みになります。異常な筋活動により正常から逸脱した方向へ関節が引っ張られて痛みを出すということです。

 

 ではさらに詳しくいきます。

 筋収縮を生じた際は筋紡錘を中心にして協調中心にベクトルが収束していきますが、この収束が偏りが生じることがあります。

 偏った協調中心は錘内筋線維の収縮と錘外筋線維の収縮量にズレが生じます。このズレがまず痛みにつながります。協調中心の偏りは運動方向のズレにつながり関節運動の生理的な方向外に牽引し関節構造体から痛みを出します。さらに関節運動方向を無理やり修正するために他の筋が過剰に収縮し軌道修正を図ります。このときも痛みを出します。この収縮には他の筋膜単位が使われます

 筋膜単位については確認したい方はこちらをどうぞ。

 

brainjack.hatenablog.com

 

 

 以上の3つの働きによって外傷が無く、関節に炎症を呈していない場合でも痛みが出ます。そして先ほど認知中心は筋膜を通し関節で生じるため筋肉内の活動以上があっても関節内で痛みを認知するため関節痛だと思うわけですね。

 

では協調中心とは何でしょうか。

 

協調中心とは

 まず筋外膜に筋紡錘が存在します。そして筋紡錘が収縮することで隣接する筋内膜が引っ張られて短縮していきます。筋収縮していない場所の筋内膜も収縮している方向に引っ張っれて行きます。机の上に置いたスカーフを摘まんで引っ張ると摘まんでいるところを中心にシワが寄るイメージ。このような反応が筋内全体で起こり収束していきます。この収束した点と協調中心と呼びます。

 

 協調中心が収束するには筋内膜と筋外膜の滑走性は多方向に必要になりますね。そうしないと収束できずに偏りにつながりますので。

 また協調中心が偏ることで、筋膜炎、運動方向がズレることで腱鞘炎、滑液包炎が生じることがあります。

 

  今日のテーマは、「疼痛は、非協調的な活動が正常な関節運動方向から逸脱を生じさせて関節構造体より生じる。」うですか。分からなかった場合はすみません。僕の伝える力不足です。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/9 21:19時点)
感想(1件)

最後に要約を載せておきます。

 最後にもう一度簡単に言い換えると、筋紡錘からの信号が筋膜の収縮に偏りを作り、それが骨を引っ張る方向を正しく引っ張れないことから他の方向に運動させる筋も動員して運動を成り立たせようとする。しかし関節を引っ張る方向が不適切であることは変わりません。ですので不適切な方向への靭帯や関節包の引っ張る力は痛みとして神経に伝えられます。その痛みを認知するのが認知中心(関節)となるわけです。

 

リハビリを行う上で今日の内容の応用

 まず協調中心を収束できるようにストレッチを多方向へ行う。

 よく耳にするストレッチ方向で筋に対して横断的に行うか、線維方向に行うのか、押圧するかなどいろんな手技がありますね。浅筋膜と深筋膜の間、深筋膜と筋外膜の間の滑走性を出すのであれば多方向に実施する方がよいのではないかと思います。

 

 筋緊張を改善させる効果も期待できるのですが、こちらについてはゴルジ腱器官の回にしようと思います。

この次の記事でゴルジ腱器官をを解説していこうと思いますのでお待ちください。

 

 動作時や安静時の痛みで観察する部位を関節から隣接する筋や筋間中隔に拡大して考察して治療介入を行う。理由は上記で説明しているとおりです。

 

 今日の内容になりますが、関節の炎症反応がない部位については認知中心に痛みが起こることを確認しました。ですから関節周囲の深筋膜でつながっている組織に目を向けて治療対象とすることが可能になると思います。

 

逆説的ではありますが、隣接しない筋膜単位の導入はないことになります。拮抗する筋膜の運動への介入はないわけですから、認知中心となる関節(痛みを感じている関節)に対する動きの中で治療対象から省けることになります(今回の話の機序範囲から疼痛が発生している場合に限る)。

 

こういう知識から評価を裏付けていけると専門家を名乗れる気がしてます。自己中かもしれませんが、自信をもって診療報酬を貰う(代金払って治療を受ける)患者様の前に立ちたいので。今後も行っていく僕の治療が全て根拠に基づき組み立てられた効率的な評価と治療にしていけるように勉強頑張ります。突然の決意表明でした(笑)

 

 簡単ではありますが、このようなことで今回の内容が使えると思います。また何か他にアイデアがある方は教えていただけると幸いです。

 

 今日はこのような内容となりました。また何か今日の内容で分からないことなどございましたらお気軽にコメントお願いします。分かる範囲で回答させてただ来ます。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/9 21:19時点)
感想(1件)

筋膜レベルで使う用語集

各運動方向と各身体部位の用語集

目次

  1. 筋膜レベルの区分一覧と略
  2. 各身体部位の名称と略
  3. 身体部位と運動方向の表し方

筋膜レベルの区分一覧と略

前方:antemotion(AM)

後方:etromotion(RE)

内方:mediomotion(ME)

外方:lateromotion(LA)

内旋:intrarotation(IR)

外旋:extrarotion(ER)

 

筋膜単位とは、それぞれの運動方向(前方/後方/内方/外方/内旋/外旋)に沿った筋膜ラインのことをいう。

前方方向の運動とは身体の前面の部分の区画を表します。例えば骨盤の前面と大腿前面は同じ前面になりますが、骨盤前面に位置している筋は腸腰筋や腹筋群などですね。しかし大腿前面に位置している筋としては膝関節の伸展筋になります。つまり一概に屈筋と伸筋では覚えられないということですのでお間違えの無いようお願いします。

この関係からすると大腿の内側後方が内方、その対角線上の外側前方が外方です。内外旋はその反対の対角線上の部分を言います。

 

下に画像を載せておきましたので骨らで確認するといいかと思います。

 

 

f:id:brainjack:20200505215324p:plain

運動方向一覧

 

各身体部位の名称と略

 

肩甲骨:scapula(SC)

上腕:humerus(HU)

肘:cubitus(CU)

手根:carpus(CA)

手指:digiti(DI)

親指:pollex(PO)

頭部:caput(CP)

頚部:collum(CL)

胸郭:thorax(TH)

腰部:lumbi(LU)

骨盤:pelvis(PV)

股:coxa(CX)

膝:genu(GE)

距骨:talus(TA)

足趾:pes(PE)

 

日本語と略を覚えておいていただけるといいかと思います。僕も略の方で皆さんにお伝えしていこうかと思っていますので。もし今後こちら略で表して分かりずらいとのコメントをいただきましたら日本語で書いていこうかと思っていますので、お気軽因どうぞ。

 

身体部位と運動方向の表し方

 

各筋膜単位の名前と運動方向のイニシャル(略語)で表します。例えば足指の前方方向への運動の場合は、an-peと省略されて表します。

 病院で働く人で、紙カルテに書かなくてはいけない時にアルファベットで書けると非常に手も疲れず、すぐに書けるので便利ですので紹介しました。

 そして苦労して覚えなくてもいいように僕の記事の中で多用していって自然に頭に入れていけるようにしたらいいんじゃないかなという完全な思い付きで作ってみました。

 

是非参考にしてみてください。

なお、カルテの書き方でそれぞれの病院で指定された書き方がある場合はそちらに従ってください。くれぐれも戦わない方がいいと思います(笑)

 

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/5 20:42時点)
感想(1件)

筋膜の形成と機能変化

筋のグループ化と筋膜形成の影響

 筋膜単位の進化について

 

  • 進化と機能変化 
  • 運動による進化の過程
  • 筋膜レベルの進化
  • 運動単位の生理学
  • まとめ
  • リハビリの場面に生かす

 

 

進化と機能変化 

これらについて今日は書いていきたいと思います。

こんにちは、脳筋王です。

それぞれの機能が最初どのようにして発達したのかを理解することで、その機能が持つ根本的な役割が分かります。かの偉大なチャーチルダーウィンも言っています。

「世代を超えて伝わる変化」について筋膜レベルで考えていこうと思います。また見出しに進化と書きましたが、ダーウィンさん的には間違いと怒られそうですね。

 

いつものように少し脱線したいと思います。ダーウィンの唱えた環境適応の形として、変化個体変容の自然選択は安定性選択と方向性選択の2種類があります。

簡単にいうと安定性選択は種の平均値にある個体が最強、一番生き残り数を増やす。方向性選択は、飛び抜けた身体能力最強、人生勝ち組。この遺伝子を持った個体たちが生き残り現在の生物に脈々と受け継がれているのです。これが進化論ですね。

 

この2つの選択によって子孫が繁栄して現在に至る。そして逆をいうと進化の裏で淘汰されていく機能もあったわけですね。つまり現在も残っている機能は環境に適したものとして判断できるわけです(これが言いたかった(笑))

 

話をもとに戻しましょう。繰り返しになりますが現在の組織が引き継がれているということは、生きる上で最適な機能であったと言えるでしょう。残存し受け継がれた機能は時間を経ても役割は現在も残存していることが多いです。ですから、もともとの役割を理解することは現在の機能を深く理解する上で大事になります。

 

運動による進化の過程

最初生物は側屈しかできませんでした。運動のコントロールはなく、ただその方向にある筋肉たちが収縮して体節が曲がるだけのものです。

 

その後獲物を捕獲するために泳ぐことを覚えて側屈を左右に繰り返すようになります。

獲物を口で捉えるため顎が発達、さらに獲物に顔を向けたくなり頚部の筋が発達します。

 

そして手で獲物を捕まえるようになり上肢機能、陸に上がるには重力に抗した支持性を必要とし、体幹・下肢筋の発達もされていきます。

 

運動といてこんな感じでしょうか。みなさんはご存じの方も多いと思います。今回お伝えしたいのはこの後からです。

 

筋膜レベルの進化

 

次に筋膜レベルで見てみましょう。最初の原始的な側屈レベルの運動を行っていた時は、各筋が筋節というもので仕切られていました。筋節によりいくつかの筋が連結しており、それがいくつも横に並んでいる状態です。イメージとしては、串に刺さった団子が横に並んでいる感じです(わかりにくいかなぁ・・・)。筋膜による区切りは細分化されていないため運動方向にある筋はすべて同時に収縮します。

 

右向け右と支持すると全てがそちらを向く感じですね。そこに加減はなく、目標の距離が近かろうが、移動する方向が微妙にズレていて調整が必要であろうが関係ありません。ただそちらに向けって常に全力100%で収縮するだけです。

 

そこから筋間中隔が形成され、それぞれの筋が6つの運動方向分化し、それぞれを筋膜が包みます。それぞれの間を筋周膜が包むために筋間は延長されていきました。これで自由な方向へ筋収縮を行うことが可能になりました。

 

先ほどの話に戻りますが、速度や力加減はこれだけでは難しいですが、何とか運動する方向を決められるようにました。

 

つまり筋を分けることで収縮方向は細分化されました。しかし力加減はまだできません。

 

筋周膜の外側を筋外膜が包み、筋紡錘やゴルジ腱器官という筋の収縮調整機関を形成。1つ1つの筋には筋紡錘が形成されて初めて運動単位を持ちました。

 

こうしてようやく力加減を覚えることができました。

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/5 20:42時点)
感想(1件)

運動単位の生理学

筋周膜は運動単位の活動に重要な役割がそれぞれあります。筋外膜に筋紡錘とゴルジ腱器官が存在することはすでにお伝えしています。深筋膜と筋外膜が連結しその下に筋周膜があり、筋線維の運動は深筋膜を通して全身の運動の方向性を決めて、最終的に特定の動作を導きます。

 

筋線維を包んでいるのが筋周膜です。筋線維の収縮は筋周膜を通して筋外膜に伝えられます。筋外膜の協調中心にを作る。この協調中心から筋紡錘とゴルジ腱器官の刺激を受け取ります。運動単位には多数の筋紡錘とゴルジ腱器官をもっています。

 

つまり繰り返しになりますが、筋線維の収縮を筋紡錘に伝えるには筋外膜に協調中心の刺激を集める必要がありそのためには筋周膜が必要ということです。

 

 

このことから運動神経の同期化は、中枢神経ではなく末梢神経で行っていることが分かりますね。

 

そして1つ一1つの運動単位は全か無か法則により収縮か弛緩かしかないものですが、運動の方向を決めて角度調節した巧緻動作を可能にするということです。

 

重要なことを最後にまとめておきましょう。

 

  • 魚からヒトへ進化する中で筋膜構造が形成されて運動方向が細分化された。
  • 運動制御(運動方向の決定と力加減)には運動単位の同期化が必要。
  • 運動単位の同期化には筋紡錘の活性化が必要。
  • 筋紡錘の活動は筋外膜の協調中心への筋膜の集約が必要でありそれを導くのは筋周膜である。

 

 

リハビリの場面に生かす

運動前のストレッチの有無について考えてみましょう。普段運動をあまりしない患者様がリハビリを行う時にストレッチをすると思います。このストレッチにどんな意味がありますかの回答が非常に細かく専門的に説明できますね。

 

最近筋トレ前にストレッチをすると筋出力が低下すると言われており、軽くリズミカルな運動を準備体操で行いましょうと言われていたりします。

 

では活動性の低い患者様であったり、同じ姿勢でずっといられる患者様の場合はどうでしょうか。ストレッチの優先順位は下がり、いきなり軽い運動から始めますか?

 

たいていはストレッチしますね。ストレッチしろと言いたいわけではないのでそこはそれぞれで。

 

ストレッチする理由としては痛みが出たりするからストレッチしてもらった後の方が動きやすいからという理由が多いのではないでしょうか。活動量が低いまたは同じ姿勢でずっといる方の筋はそれぞれの膜構造の間で癒着しています。つまり滑走性が低下するということです。

 

滑走性の低下は協調中心の収束を阻害しますね。ということは筋紡錘に適切な刺激が入らずに、運動単位の同期化に支障が出ます。そのため本来行いたい動作の巧緻性が落ちたり、筋出力が低下したりするので、結果として動作のパフォーマンスを下げてしまうことにつながります。

 

ですので現在の最大パフォーマンスを発揮してもらうためにストレッチしてますと言えたらカッコよくないですか?

 

まあ言葉で語ってもあまり理解されないでしょうけどね・・・難しいからね。

 

筋膜マニピュレーション(理論編) 筋骨格系疼痛治療 [ ルイージ・ステッコ ]

価格:9,900円
(2020/5/5 20:42時点)
感想(1件)

以上が今回の内容となります。今日は比較的終始まじめにお伝えしていったと思います。これからも少しずつ皆さんに有益な情報をお伝え出来たらと思いますのでよろしくお願いします。