ファンクショナルリーチテストの意義
日々臨床を行っている皆さんお疲れ様です。今日はバランス検査の一つファンクショナルリーチテストについて少しお話しようと思います。内容は題名の通りファンクショナルリーチテストを行う意義についてです。
ファンクショナルリーチテストとは
まずバランス機能検査としては非常に信頼性は高く、グレードAです。
実際の検査としては、①立位になる、②上肢を前方へ挙上(90°)、③そこから上肢を前方へ突出しどこまでいけるか距離を測る検査です。
注意点としてステップを伴ったり、体幹の回旋を伴う代償を起こさないことです。また別法として上肢の挙上が難しい患者には肩峰の移動距離を測ることもあります。
ファンクショナルリーチテストで見られるバランス
・事前の運動予測
・運動中のバランス戦略
事前の運動予測
まず事前に運動予測する要素としては、フィードフォワード系やpAPAがあります。その2つついてはまた今度ということで・・・。
簡単に言いますとフェードフォワード系やpAPAと呼ばれる動作をする前に筋活動を起こして姿勢変化に対して動作時の安定性を確保する体の反応になります。
上肢の素早い挙上時に腹横筋の筋活動が100ms速く活動を開始するのは有名かと思います。
この反応とファンクショナルリーチテストの関係についてですが・・・。
まず検査に入る前に上肢の挙上直後を観察します。その際にふらつきが出現するのかしないのかをみるんですね。ふらつきが出現する場合は事前の筋活動を起こせていない可能性があります。原因の一つとしては事前の筋活動を作り出すのは、視覚情報に頼っているため視力に問題があるのかもしれません。もしくは認知面の問題、単純に上肢の円滑な挙上ができないだけ、それに伴う運動連鎖不全・・・など。可能性は広がるのでそれぞれの項目について消去していって残ったものを採用しましょう。
運動中のバランス戦略
バランス戦略で代表される足関節戦略と股関節戦略があります。この二つはみられるものが違うのと移動できる距離が違います。
足関節戦略の特徴としては、COPの移動を行うときに働く。股関節戦略と比べて重心の移動距離は短い。安定した床面で機能する、です。
逆に股関節戦略は狭い場所や不安定な場所にいるときに働くことや移動距離が足関節戦略よりも長いこと。股関節戦略で支えられない場合にはステッピング反応が出現します。
移動距離は、足関節戦略<股関節戦略
足関節戦略を行う意義としては、COPの移動を行うと話しました。歩行を考えてもらえばわかるのではないかと思います。最初の一歩を踏み出す際にまず遊脚側後方へCOPが移動します。その反応を受けて支持脚前方へCOGが移動します。その後COGの後をCOPが追いかけるように支持脚側に移動していきます。この反応を逆応答反応といいます。
つまり重心移動を抗重力伸展活動下で行うにはCOPを最初に動かしCOGの位置を変える必要があるわけです。
これができないと例えば前方へ転倒しそうになった時にCOPが前方へ移動して、COGを追い抜いて前方へ移動することで重心位置を後方へ戻して転倒を防ぐわけです。しかしそのCOPの動きを起こせないため、そのまま前のめりに転倒してしまいます。イメージとしてはパーキンソン患者の姿勢反射障害のようなものです。
そして股関節戦略についてですが、この戦略は支持基底面内に重心を留めておく最後の砦となります。つまり支持基底面内でCOGを動かせる最大範囲を示しています。この範囲が狭くなると転倒につながるのは想像できると思います。指先の方へ重心移動または踵の方へ体重移動し、重心を支持基底面内に留めておけないとなると立位姿勢でいるだけでふらつき転倒します。
この反応は両方ともできないといけないことが分かると思います。そのためファンクショナルリーチテストを行ってもらう場合は上肢の前方突出時の反応を見る必要があります。つまり最初は足関節の戦略で行うため殿部は後方へ移動しません。足関節で行える範囲の前回を超えると途中から殿部を後方に突出してリーチ動作していきます。この切り替えを行えているかみること。
そして距離がどれくらいかをみることで、股関節戦略でいくことのできる限界の距離をみます。
ファンクショナルリーチテストのカットオフ値でですが、20㎝以下で非常に危険、平均25㎝~30㎝で、30㎝以上は転倒リスクはかなり低いとされています。
この基準をもとに検査して頂けるといいかと思います。
最後に
ファンクショナルリーチテストだけでも見ようと思えばいろいろなことが見えてきます。後半の説明は動作分析に近いものが多い印象ですが、そもそも動作分析とはこういうものなんじゃないでしょうか。
解剖学や運動学と現象すり合わせて現状の患者様の状態を知ること。この統合と解釈があるから僕らはプロを名乗れるんでしょうね。なんつって(笑)
もちろん評価は一つではなく複数行い整合性を高めないといけません。しかし日常のリハビリ内で自然に行う動作が一番自然なバランス戦略の切り替えを行っているのではないかと思います。
あくまでファンクショナルリーチテストを行う意義ですが、客観的な数値化できる動作であって簡便に実施可能ということで今回紹介させていただきました。今回紹介した検査の意義以外にも見て取れる所見は多いのではないでしょうか?
基礎から応用まで遠回りを繰り返しながら前に進んでいきましょう。それではお疲れさまでした。明日かも臨床頑張りましょう。
トレンデレンブルグ歩行を体幹で治療する
臨床場面でよく見かけるトレンデレンブルグ歩行についてです。
今日のレジュメ
トレンデレンブルグ歩行とは
皆さん知っていると思いますが、トレンデレンブルグ歩行とは歩行時の支持脚と逆側に骨盤が傾斜することです。そして支持側と同側へ骨盤が傾斜するのが逆トレンデレンブルグ歩行といいます。そのトレンデレンブルグに体幹の立ち直りが出現するとトレンデレンブルグ-デュシェンヌ歩行といいますね。
一般的に中殿筋の筋力低下と言われ、中殿筋の筋力トレーニングとタンデム歩行(継ぎ足歩行)を行います。しかし多くの場合、「なんかよくなんないな。」と感じることもあるのではないでしょうか。
今回はこの「よくなんないな。」に対して様々な要因がある中、体幹に着目し解説していこうと思います。
股関節外転作用が中殿筋?
中殿筋なんですが腸骨稜のやや前方と外側、後面に起始し、大転子の上部に付着しています。解剖学上立脚期の作用としては、臼蓋に大腿骨頭を押し付ける作用があります。肩甲上腕関節でいうところの棘上筋にあたります。外転要素はあれど、どちらかというと安定性に関与していますね。小殿筋も似たような作用ですがより後方へついていますのでやや伸展要素が強いのではないでしょうか(小殿筋については調べてないので聞き流してください。)
別の視点からトレンデレンブルグ歩行を捉える
まず下肢で骨盤の質量を支えています。そして骨盤は体幹の質量を支えています。ですので骨盤の反対側への傾斜を骨盤に着目し治療を実施することが間違っているとは言いません。
しかし体幹の質量を支えているのは骨盤になるわけで、片脚立位時に効率的に骨盤に質量中心をもっていかないと必要以上に筋力が必要になり、下手をすると支えられない可能性があります。その場合は骨盤が浮いている足の方へ傾斜してしまうというわけです(体幹の問題で支持脚と反対に骨盤傾斜が出現)。
この時に中殿筋の筋力トレーニングを行っても予後が不良なわけですね。
もう一つ骨盤傾斜を改善させない原因があります。それは骨盤へ体幹の質量重心を移動できていない状態で頑張って同側の脊柱起立筋や広背筋、腰方形筋などの過緊張を生じると単関節筋の筋活動が抑制されます。この抑制により分節的な運動困難になりふらつきは大きくなります。さらに対側の体幹伸展筋も抑制されて本来支持性を必要とする筋群の活動は生じなくなります。これにより正常とはことなる筋活動による姿勢制御を学習します。
また体幹の質量中心の移動不良からの同側筋の過緊張は腰部へのストレス増大につながることからストレスに対し無意識的に筋に抑制をかけている可能性もあります。
問題点は胸椎部にあり
上記で記載したとおり、骨盤に対し体幹の質量中心の側方移動が低下したことによるトレンデレンブルグ歩行の出現が存在するわけですね。
そして側方への体幹の質量移動は、各脊椎の側屈関節可動域からも分かる通り主に胸椎部で行われます。そして胸郭には肋骨が付着しており、胸郭の運動が深く関わってきます。側方への体重移動を行うには脊柱の運動と胸郭の運動を合わせて考える必要があります。
胸郭の運動について
胸郭は3つの部位に分けて考えます。分け方としては上位胸郭(第1~7肋骨)、下位胸郭(第8~10肋骨)、浮遊肋(第11、12肋骨)です。さらに胸郭の運動は3パターン存在します。
- 全ての肋骨が前方回旋と後方回旋を行う体幹の屈曲伸展運動
- 左右で相反する肋骨の前方回旋と後方回旋が生じる体幹の回旋運動
- 側方への体幹の偏位が生じる上位肋骨と下位肋骨で相反、さらに一側の上位肋骨と下位肋骨で相反する体幹の対角線の運動
この3番目の運動が側方への体幹の質量中心の移動には必要になります。
評価はそんなに難しくないです。しかし症例検討レベルで評価が必要な時は不十分と言われてしまうので、あくまで臨床場面ということでご容赦ください(笑)。では評価のポイントになります。
評価は座位で行いましょう。
それぞれのポイントについてです。
まず体幹の可動性ですが、回旋と側屈と書いたのは、脊柱の運動として側屈と回旋はセットで起こるからです。動作指示としては体幹の回旋がいいと思います。見たいのは、抗重力位での体幹の可動性になりますので重心位置が関節から遠ざかると姿勢保持のために不要な筋緊張を出現させてしまうので、重心位置の移動の少ない回旋がいいかと思います。屈伸に関しても理由は同様です。しかし脊椎ひとつひとつの崩れをみたいときは屈伸運動が有効な場合もあるのでケースバイケースになります。今回は割愛させていただきます。
次に体幹のリーチ動作での左右の体重移動についてです。なぜリーチ動作を用いるのかということなんですが、もしリーチ動作を用いないで体重の側方偏位を指示したとしましょう。この場合は床面で骨盤が固定されて上部体幹が運動するわけですから、運動様式としてはOKC(開放性運動連鎖)になります。しかし上肢を肩の高さで固定しその高さを保持したまま運動するとなると肩の位置が固定部になるため体幹の運動はCKC(閉鎖性運動連鎖)となるわけですね。
しかしトレンデレンブルグ歩行を行う方や高齢者は脊柱のアライメントが崩れており、上肢の屈曲や外転が90°できないことも多いので、その場合は肩の高さが変化しないように注意しつつ、臀部の圧が左右に偏るように指示する方が体幹の筋緊張を高めることなく動作可能なことも多いので参考にしてみてください。
この2つを行う上でのポイントは足部を接地しないこと(上行性の運動連鎖を防ぐため)と臀部で左右の体重移動を行う場合はゆっくりと動作を行うこと。そして移動範囲は胸骨が坐骨まで移動できることです。これがもしできているのであれば、体幹の要素はひとまず置いといて骨盤から下の部位に目を向けてみるといいかもしてないです
。これはこれで治療対象を絞れているのでいいのかなと思います(イッツ!ポジティブシンキング(笑))
最後まで見て頂きありがとうございました。
この二つを通して可動性と筋力を大まかに評価して頂き、トレンデレンブルグ歩行時にどれぐらい影響しているか判断してください。
今日は久しぶりに長々と解説を行ってみました。今後も臨床を行っていて気づいたことや効果的であったことがあれば共有していきたいと考えております。
このように牛歩の如くゆっくりながらも成長していければと思っていますので今後ともよろしくお願いします。
PDCAの目標設定について
今日は皆さん知っている方も多いかと思いますが、PDCAについてです。
お恥ずかしい話ですが僕はPDCAについてあまり知りませんでした。興味ないかもしれませんが少し僕がPDCAと出会った経緯から説明します。飛ばして内容から見て頂いても大丈夫です。
このPDCAなんですが、最近働いている病院で教育関係に関わる機会がありまして、僕もまだ経験浅めなので教育素人です。そのため仕事をする上で大事なことは?とか、仕事ができるとされている人とそうでない人の違いは?とか考えてみることにしました。自分の中に無いなら外に向けようと思い関連書籍も読み漁ってみました。その結果PDCAにたどり着いたわけですね。書籍を読むと時間かかるので僕が書籍を複数読んでみたので簡単に知りたい方はみてってください。
基本のPDCA
まずPDCAとは、P(plan:計画)・D(do:実行)・C(check:検証)・A(action:再試行)の頭文字です。そしてこの順番に物事を考えて実行していくことで成長を促進していくことができますということになります。
簡単にいうと、目標設定して、目標に向かってしっかり振り返りながら不具合は修正し目標を達成していきましょう。また良かったことも振り返って、より効率的にするにはと考えて次回はよりいいものを提供しましょうです。
ここまではググればでてきます。
PDCAの目標の解釈
まず目標についてですが、目標は大きく分けて2種類立てないといけません。目標は長期的な最終目標と短期的な目標を立てる必要があるということ。つまり複数のPDCAを回すということ。例えばですが、最終目標を大きなPDCA、短期的な目標を小さなPDCAとしましょう。大きな目標達成のために必要な要素を列挙します。その一つ一つを小さな目標とするとその中で目標達成に向けてPDCAを回すということになります。
大きな目標と小さな目標
目標を設定するには最終的な望む結果とその結果に向かって必要な要素を見つける必要があります。すなわち、問題を細かく掘り下げていくことです。これを因数分解するというらしいです。
お分かりの通り最終目標となる大きな目標はいろんな結果の集大成になります。現象としてとらえると様々な要素を含んだ良い結果と悪い結果を総合して、積みあがった結果が、自分が望む結果と一致した時に目標が達成されたとされるわけです。つまり自分の理想の結果に向けて、様々な要素の結果をコントロールしていこうということです。
言葉で書くと難しいですが、簡単な算数にしてみましょう。最終的に合計を10以上にしたいとします。その目標に向かって①~⑤までの行動を起こします。①が成功すれば1点獲得でき、②が成功すれば2点、③が成功すれば3点、④は4点、⑤は5点とします。
これらすべてを合計すると15点になります。全部が成功するとは限らないのでそのうちの何個か成功させて最終的に10点にすれば、①~⑤のどれが成功していてもいいわけですね。
しかし5つの行動のうち全部失敗すると0点ですから、しっかり全て取りに行くつもりで行動する必要がありますね。この時①~⑤を成功させるためにそれぞれを小さな目標にしてPDCAを回すということになります。イメージとしては、収益的な話でいえば当てはまるのではないでしょうか。
このようにしてPDCAを回すには、大きな目標を立てて、その目標に向かって積み上げていく小さな目標を立てる必要があるわけですね。
今回はここまでにします。まだ触りの部分になります。しかし言葉にすると難しいですが、日常的に行っている方も多いと思います。しかしその何気なく行っていたことを意識して行うことでさらなる自分の成長につながると考えています。次回も短めにPDCAを分解して説明していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
ポジショニングから展開するリハビリテーション
こんにちは。日々臨床をしていく中で気が付いたことを紹介するブログです。皆様の臨床のヒントになればと考えております。
時間の無い方は太文字の部分だけ読めば内容を把握できるようになっています。どんどん飛ばして読んでください。
今日は両側性肺炎で入院された患者様に対してリハビリテーションを実施しました。その時に気が付いたことを紹介したいと思います。
今日のテーマはポジショニング×感覚入力×動作練習です。
ポジショニングを行う目的
僕は臨床の中で筋緊張の軽減のためによくポジショニングを行うことが多いです。今回も両側性肺炎の患者様の筋緊張の亢進を確認し、原因を評価し動作練習につなげていきました。
ポジショニングを行う目的は筋緊張の軽減とリラクセーションと疼痛軽減などがあげられます。
そして筋緊張を軽減することで関節可動域は拡大し疼痛軽減や筋発揮の向上などの恩恵を受けることができます。最大パフォーマンスで動作練習を行うために必要になると思います。
今回の介入は40分でした。今回行った評価から治療までの40分間の流れについて書いていきます。
症例紹介
両側性の肺炎で、既往歴に脳血管疾患を有しており上肢は屈曲パターン、下肢は伸展パターンをとっています。ステージは3レベルです。
全身的に筋緊張は亢進しており、股関節屈曲時には疼痛を有します。
評価
・嚥下機能障害
・全身筋緊張亢進から関節可動域制限
・左股関節屈曲時に疼痛
・本人より左半身の感覚鈍麻
・起き上がり動作は全介助レベル。立ち上がり動作、中等度介助レベル。立位保持中等度介助レベル、移乗動作、中等度介助レベル。
ここからが重要かな・・・。
まず筋緊張亢進の原因を探ります。
評価のポイントは、胸郭運動と股関節屈曲時の疼痛の変化です。
胸郭運動の拡大のために肩甲帯や骨盤などにタオルなどで支持性を変化させて筋緊張の変化をみて行きます。
結果左半身へタオル挿入を行うことで筋緊張は軽減し他動運動時に可動域の拡大と抵抗感の低下が認められます。
しかし股関節屈曲運動は抵抗感が認められた。そのためさらに骨盤の感覚入力を増加させるため、左股関節屈曲時に骨盤部へ押し付けて屈曲運動を行ってみたところ可動域の拡大を認めました。
大腿骨頭と臼蓋のアライメント不良も考慮しますが・・・。
評価結果として左半身への感覚鈍麻から不安定感を呈し、安静時筋緊張が亢進していると推察しました。
次に肺炎に対する対応として咳嗽反射時のパフォーマンスの評価として、筋緊張を検査します。
ポイントは僧帽筋上行線維と大胸筋、腹直筋、脊柱起立筋、呼吸運動時の胸骨の動きです。
まず正常な呼吸を行っているとき胸骨は体幹に対して平行に運動します。しかし胸式呼吸を行うと僧帽筋上行線維と腹直筋が働きます。そして胸椎は前傾します。逆に腹式呼吸を行う場合は大胸筋と脊柱起立筋が働きます。そして胸骨の動きは後傾します。ですので筋を触診し、胸骨に手を当てて動きを観察することパターンをいることができます。
この患者様では腹式呼吸を行っていました。これは正常の運動ではないため咳嗽運動のパフォーマンスは低下すると推察しました。
介入のポイント
・関節可動域練習
関節可動域練習は左半身へタオルを挿入し支持性向上と感覚入力を増加させて実施します。
胸郭の運動は体幹の左回旋により左肩甲帯への感覚入力を意識して実施。股関節屈曲は屈曲時に骨盤部をベッドへ押し付けながら実施。
・左側から起き上がり介助
関節可動域練習により可動域の拡大が図れたのち、あえて左側から前回ので起き上がりを行い左半身への感覚入力を増やしながら大きな身体重心を伴う運動を
咳嗽の出力を向上させるために胸骨が体幹に対して平行に近づくように介入します。
・立ち上がり動作では左膝固定と左骨盤部前傾介助、立位後の足部への荷重促しを実施しました。
介入後
結果として
・介入中の流延なし
・臥床時と車椅子乗車時の筋緊張軽減
・車椅子乗車後の疼痛訴え無し
・立位保持の右下肢の筋出力の増加
これらが得られました。今後繰り返し練習を行うことで最終的にはADL動作の改善につながっていくと思われます。
今回のポイント
動作の獲得と原因疾患に対する対応を一回の介入で行うことは時間が足りなかったりしますよね。僕も代行で今回が初回であったため評価と治療を一緒に実施したこともあり時間に追われました。動作と原因疾患に共通のポイントが見つかれば介入が効率的になったり、時短になったりするので見つけていく視点が大事だなと改めて思いました。今後も意識してリハビリを行っていこうと思います。
また筋緊張亢進している部位に対応することで他の部位のパフォーマンスにつながるため無視できないなと思います。運動連鎖しますし、筋膜や筋もつながっていますから・・・。
重要なことはベッド上から積み上げて最高のパフォーマンスを離床後、立ち上がりや歩行などに生かしていく必要があると思います。
また介入のポイントを決めたら一貫して全ての介入に取り入れていくべきだと思います。
今回は感覚入力に着目し、本人の不安感を生じさせないように介入プランを立ててみました。もしも似たような症例をお持ちでしたら是非評価と介入に取り入れてみてください。
またご意見やアドバイスがあればよろしくお願いします。ではまた。
転ばないバランス能力とは。そのためのリハビリは。
転倒はその人の人生を左右する一大イベントになる瞬間である。その瞬間をどのように迎えるかでその後の生活が変わるのである。
同じ日々を送ることができるのか。ベッド上で寝たきりか。明日することが変わってしまうこのイベントをどのように回避するのか。または起きるイベントの被害をどのように最小限にするのかがポイントになるだろう。
こんにちは。少し大げさな書き方をしてみた。しかしこれは僕の本心でだ。
世の中の人、特に高齢者の中には転ぶ人と転ばない人がいる。その転ばない人と転ぶ人の間にある違いは何だろうということについて書いていこうと思う。
1、転ぶって何だろう?
最近臨床をしていて思ったことがある。それはバランス能力の向上とはなんであるかでる。バランス能力の評価をするバランステストがあることは知っているし、臨床でもよく使っている。しかし単純に検査バッテリーの点数でみて、点数が良くなったからバランス能力が向上したんだと言い切れるだろうか。
例えばBBSで36点が46点になったから屋内はフリーだねということは誰にも分らないと思うのだ。その一つ一つの項目の意味を・・・等いうことではなくて、もっと根本的なところに着目したいと思った。
バランス能力が高いとは転ばないことであると私は考える。そうするとBBSの項目で減点されているものがあれば、その減点項目に類似した動作を行った場合転倒するリスクがあるということになる。でも実際病院を退院されてすぐ転ぶ人もいれば、転ばない人もいる。認知面の影響や高次脳機能の影響もあるだろうけど現実はそんな感じだ。
私の担当した方でも何人かは転倒されて再入院していた。その際には「BBSでは点数取れていたし、ある程度自己管理能力もあったはずなのに。」としばし思うのだ。逆のパターンもある。転ぶだろうなと考えていた方が転ぶことなく生活されていることに驚くケースだ。
この違いは何であろうか。たまたま転んだだけであろうか?それとも生活環境の違いか?身体の使い方か?わからない。
そして悶々としながらも考え、一つの答えを出してみた。それは「分節的な身体の使い方ができるかどうか」だ。
バランス能力とは転ばないこと。しかし人は転ぶ動物である。重要な違いは頻度と転び方だ。転倒しない人の身体の使い方はしなやか。きっと転倒する際も、重心をうまく下方へ下げて転ぶことができていると思われる。
専門的に言うとしなやかな動きとは、脊柱の分節的な運動を行えるということ。これが今回の答えだと最近思っている。だから筋緊張の高い人はよく転ぶ。イメージとしては、片麻痺の患者様や整形的な疾患を持つ患者様でも筋緊張が上がってしまう人などである。なんにしろ身体が棒のようにして歩いている人はたいてい転ぶのだ。そうした方に行うリハビリは筋力トレーニングを行っていてもなかなかバランス能力が向上しなかったり、ガチガチに身体を固めて片脚立位の秒数を伸ばしたって結局転ぶのだ。
そしてガチガチに身体を固めているから重心を下方へうまく下げて転ぶこともできない。また四肢の緊張も上がってしまっているから保護伸展反応も出現しないために頭部をぶつけたり、骨折したりする。骨折すると活動性が低下してさらに廃用症候群が進み徐々にADLが低下していくのだ。
このような悪循環を避けるには転ばないようにバランス能力を向上させることが必要だ。具体的には分節的な体幹の運動を可能にするリハビリである。
2、考えの変化とリハビリの変化
考え方が少し変わったら、少しストレッチと筋力トレーニングの考え方が変わった。
必要な可動域は矢状面上の屈曲伸展運動だけではなく、また前額面上の動きだけでもない。水平面上の動きや関節の副運動も意識した身体全体としての動きを行うことである。転倒するときに関節はそれぞれの面上で崩れない。崩れに対しバランスをとるときには、必ず関節は複合的に動く必要があるからだ。
筋力トレーニングは、10回全力で抵抗運動行って鍛えるよりも低負荷で分節的な運動を誘導しながら行う筋収縮を大事にするようになった。これは促通に近いのかもしれない。分節的に出来てきたら難易度を上げていく。従重力位で出来たら介助量を減らして抗重力位で行っていく。こんな感じだ。
リハビリのやり方を変えて気付いたことがある。
1つ目が分節的な運動を行っているときは驚くほど筋活動は小さく、手に伝わる骨の動きがなめらかであること。
2つ目が本人がリラックスしていること。呼吸は整い、表情穏やかで関節可動域練習や筋力トレーニング、動作練習を行うようになる。
バランス練習の時の反応は、かなり小さい前後左右の運動である。片脚立位を行ってもやっぱりふらつきは出ている。けれどいろんな箇所が動き姿勢を保とうとする。これが大きな違い。バランスのとり方が違い、バリエーションがあるのだ。
この後の歩行ではふらつきを認めても、何とか自力でふらつきをコントロールして歩けるようになる。もしも大きくふらつくことがあっても、筋緊張が高まりすぎていないからステップを踏むことができる。
これが転ぶ人と転ばない人との大きな違いであると思う。
3、最後に感想
最近思ったことだしまだ練習の考え方を変えた後、退院した人もいないから分からない。もしかしたら再入院されるかもしれない。
しかし以前よりもリハビリの質を上げることはできたと勝手に思っている。この考えに至るのに5年半かかっている。まだまだ考えが足りてないかもしれないし、間違っているのかもしれない。これからも考え続けよう。
しかしたとえ間違っていても、新しい考えが私の臨床を豊かにする。豊かになれば患者様の「あれがしたい」を叶えることができるかもしれない。そんな患者様の前に立った時、自信をもってリハビリできるように準備していこう。そして患者様の「あれがしたい」が叶ったときに一緒に喜べたらいいなと思う。
最後まで読ん頂きありがとうございました。これからも心のアンテナは常に張って気付いたことを書いていきます。よろしくお願いします。
足部の運動と痛みについて考える。
こんにちは。今日は足関節前面、具体的には距骨部に痛みがあった患者様に対して評価と治療を行ったときに感じたことをお伝えしようかなと思います。
そもそもなんですが、今まで臨床を行っていく中で足部の硬さに着目することはありましたが、足部周囲の筋緊張の低下に着目してリハビリを行うことってなかなかないですよね(僕だけでしょうか・・・)。
今回は足部周囲筋の低緊張に着目してリハビリを行った結果足部の痛みが軽減することができたので皆様に共有しようと思います。
今日のテーマ:足部の運動と疼痛
評価
自分の評価の流れを書いていきます。
まず痛みの原因を知るために行った検査についてです。
疼痛が出ていた動作は、立位保持と歩行でした。
しかし姿勢を観察してみると痛みのある側の腰は引けて反対下肢で優位に荷重しています。移乗や歩行を行うと支持性は低下しており膝関節の動揺を呈しています。荷重時に痛みがあるようです。
次に臥位になり他動運動を実施。背屈運動時は過可動性と最終域までの抵抗感の低下、最終域に痛みの訴えがありました。前足部の広がりは少なく、足指の若干の変形も見られます。距骨の背屈運動時の滑りは良好です。
そのまま自動運動時の評価をしてみました。背屈運動は可能でしたが最終域まで運動を行うことはできず、運動方向も一定していません。
ここまでで何となく足部の低緊張と足部のひろがりの制限から距骨下関節に負荷が収束した結果痛みにつながっているのではと考えていました。
しかしここで気になったのは、運動時は脊柱後弯の影響もあり後方重心下での動作となっているのに痛みがあるということです。具体的に申しますと最終域までレンジを使っていないのに痛みが出てしまっているということです。
そうなるとさらに詳細な検査が必要になりますね。
しかし、ご高齢ということもあり簡単な運動指示はできるものの複雑な指示入力は困難であったためさらに問題を限定していく方法として、介助方法の工夫をしてみることにしました。
僕が毎回意識していることは最小限の介助と限定的な介助です。
実際には運動連鎖を意識して行っていきます。この方の場合は座位姿勢から崩れていましたので、まずは胸郭部から運動を促してみましょう。
上位胸郭の運動(特に右側の後方回旋誘導)を意識して腋窩に手を当てて頚部からの力の伝達を足部まで届けるように前方への重心移動を促します。最初は体幹がふらついて運動方向が定まりませんが徐々に前方へ追従する動きが出てきました。そのまま続けていると下腿が外側や内側へ倒れていましたが徐々に膝が前方を向きますのでそこまでいたっれたら立ち上がってみます。若干骨盤は引けてしまいますが先ほどよりも介助量は少なく、また疼痛側へ荷重を行いながら立つことができました。
余談になってしまいますが、この介助はほぼ治療のような介助ですが体幹の問題点と動作の問題点と解決方法、痛みの原因の確認などいろいろなことがわかりますのでお勧めです。
さて実際に立ち上がることができましたのでその場で疼痛について聞いてみました。そしたら痛くなかったとのことです。ここでは疼痛のみについて話しますが、分かったことして単純に過背屈が強要されるようなメカニカルストレスが距骨部にかかっているのではなく運動方向が定まらずにあることで一番可動性のある距骨部にストレスが集約してっしまったことが原因であることが分かりました。
問題点抽出
ですのでここで検査結果から問題点を抽出してみました。
1つ目の問題点は動作時の運動連鎖不全です。さらに細かく言うと下行性運動連鎖不全であり、胸郭部のアライメント修正と力の伝達を整えることで改善が可能です。
2つ目に距骨下関節にメカニカルストレスが集約してしまうことです。原因としては、足部周囲筋の筋緊張低下と筋力低下、前足部の硬さがあります。前足部の関節可動域を改善しつつ、足関節周囲筋の筋活動促通を行うことにしました。
治療プログラム立案
以上の問題点解決のため治療プログラムを立案していきます。
1、前足部のストレッチと関節可動域練習
2、足部周囲筋の筋活動促通
3、座位での体幹前傾練習
4、立位練習
治療結果
結果としてご高齢ということもあり動作レベルや覚醒状態にムラもありますが、以前よりも痛みの訴えは少なくなりました。さらに足部の安定性が向上したために動作能力も改善してきています。
感想
まあ今回はうまくいきましたがまだまだ先輩方から言わせると粗の目立つものなのではと思います。アドバイスや質問、意見などあればして頂けると僕も日々の臨床のモチベーションを高めて取り組むことができますのでよろしくお願いします。
あまり辛辣な内容が並ぶとショックを受けますのでお手柔らかにお願いします・・・
こんな感じでこれからも投稿をしていきたいと思っています。理学療法を通して皆様とつながり合い理学療法を盛り上げていき活気ある社会を間接的に後押し出来たらと思っています。
腰の痛みにはハムストリングスのストレッチが有効
こんにちは脳筋王です。今日は腰痛について改善がみられた症例について紹介したいと思います。痛みを改善させることは結構難しかったり、治ってもまたすぐに痛みを訴えたりとリハビリをする上で苦手意識があったりします。
腰部が痛みを訴える患者様に腰部の筋をストレッチしても効果が薄かった時に次ぎ何をしようかと迷うこともあるのではないかと思います。
そんな腰椎に対して今回は、ハムストリングスのストレッチを行うことで腰痛がすっきりと治り、さらに歩行バランスの改善までも図れた症例があったのでここに紹介したと思います。
目次
- 症例紹介
- 痛みの原因
- リハビリ内容
- 痛みを改善することで得られた副次効果
- 今日のまとめ
症例紹介
80歳代で廃用症候群で入院されている方です。
腰痛を認知機能低下によりいつから痛みを生じていたかは分かりませんが、右PSISに局所的な痛みを生じていました。座位や立ち上がり、歩行で痛みを生じるとのことです。
立位バランスでは、片脚立位では右下肢支持側の時に骨盤後傾し外側へ崩れを生じます。左下肢支持側時は左下肢への体重移動が減少しすぐに右足をついてしまいます。
姿勢と動作を見てみましょう。
座位姿勢と立位姿勢でも円背を呈しており、骨盤後傾しています。
体幹の回旋の自動運動では痛みは生じませんが左回旋が右回旋と比べて低下しています。
歩行では、右立脚期で骨盤の外側偏位が著明に見られ、体幹が右前方に崩れます。左下肢の荷重量は減少し右前側に加速します。加速することで右側へ転倒リスクを伴っていました。
痛みの原因
腰痛を引き起こす原因は様々です。今回はその中で仙結節靭帯に着目しました。仙結節靭帯とは仙骨から坐骨結節に付く靭帯です。そのままですが(笑)そしてこの靭帯は、胸腰筋膜、多裂筋と大殿筋、ハムストリングスに筋膜で結合しています。
この靭帯は骨盤後傾位で伸張されます。伸張され続けることで痛みを出現します。つまり今回の症例のように円背姿勢で常に骨盤後傾位で座位保持することで痛みにつながります。
注意するポイントとして、円背は改善しない場合は今後も腰痛のリスクを生じますので
、痛みの改善と自己管理できるようになることが目標になりますね。
リハビリ内容
これを1単位で行います。時間のある時は40分やりますが、だいたい20分です。
時間の割合としては、ストレッチ3分、体幹の回旋2分、立位バランス3分、歩行練習5分で合計18分くらいですね。あとは挨拶やらお話しやらで時間使っちゃいます。
歩行練習と立位バランス練習(片脚立位)は別に何か特別なことを行っているわけではないため省略します。
ストレッチ方法
座位で膝関節軽度屈曲位にて足部を触るように前屈していきます。軽度屈曲位で行うことは身体が硬い方はそもそも長坐位で座ることが困難であることや骨盤部と股関節部の動きを行いやすいので便利ですよ。座位なので安全に行えます。安全な動作方法の指導は、今後再発の可能性に対して自主練習として行うことができるようにすることも考えて、なるべく自力でできるものを選ぶといいと思います。手でストレッチをしてもいいですし、SLRも有効かと思いますが、自力で行うことが難しいので今回は前屈を選択してみました。
体幹の回旋について
体幹の回旋は評価と骨盤内運動を行うことが目的です。骨盤内運動とは、仙腸関節での捻じれのことです。例えば体幹の右回旋で考えていきましょう。右に回旋するときは、右の寛骨は仙骨に対して後方回旋(後傾)します。逆に左寛骨は仙骨に対して前方回旋(前傾)します。
ハムストリングスは体幹の坐骨を足部に向けて引っ張りますので寛骨を後傾方向に引っ張ります。つまり後方回旋ですね。先ほどの体幹の回旋を行う際に左回旋を行う時に右寛骨が仙骨に対して前方回旋しないといけませんが、ハムズトリングスが筋緊張亢進している場合は邪魔しますので結果的に体幹の左回旋の可動域が低下します。
SLRで評価してもいいですが、体幹の回旋で評価することには理由があります。1つ目が他の要素を消去するためです。大殿筋や胸腰筋膜の場合は骨盤から体幹に走行するときはクロスします。右の大殿筋や胸腰筋膜は左体幹に走行しますので体幹の同側回旋を行った際に可動域制限を引き起こします。今回は反対側の回旋ですので問題点から除外できますね。多裂筋の場合は骨盤の前傾を行う筋ですので対側回旋の可動域制限は生じません。今回は左右差がありますので除外できますね。起こるのは対側回旋で可動域制限を引き起こしておりますのでハムストリングスが原因と絞れるわけですね。繰り返しになりますが、SLRではなく体幹回旋で評価することで問題点を絞ることができます。
こんなにうまくいくことも珍しいですが、ラッキーってことで、自信をもってリハビリしていきましょう。
痛みを改善することであられた副次効果
だいたい予測できるかと思いますが、骨盤の可動性が改善したため、片脚立位の非対称性の改善とハムストリングスの筋発揮も改善されたため抗重力伸展活動にて十分な姿勢保持能力を発揮できるように結果、バランス能力の改善されました。立位バランスの改善や体幹の非対称性の改善から歩行時のふらつきもなくなりました。
今回の症例では実施していませんが、座位時間が長くなる場合は座面の高くなる椅子を勧めるのも腰痛管理のために有効だと思います。理由としては、骨盤が下肢よりも高くなることで足部荷重を行うと骨盤が前傾位に自然に誘導されるため疼痛が出現しにくくなります。是非行ってみてください。
最後に今日のまとめです。
- 円背患者様にはハムストリングスのストレッチが有効である。
- 円背を改善できない場合は、自己管理の獲得が目標になる。
- 腰痛の原因は、仙結節靭帯の過伸張ストレスである。
- 体幹の回旋は仙結節靭帯由来の痛みに関わりが深い筋を絞り込むのに便利である。
いかがでしたでしょうか。ほんとに腰痛など痛みに悩まされている患者様を担当することがあると思います。今回の内容を参考に皆さんの担当患者様とリハビリを行うあなたの悩みが解決するきっかけになれたら幸いです。それではまた有効だった手技や改善が見込めた症例について紹介していきたいと思いますので興味ある方は確認して生かして頂けたらと思います。それでは、また。